研究概要 |
平成25年度は、グリコサミノグリカンの代謝に関わる異性化酵素Gbs1892と還元酵素Gbs1891の構造機能相関を解析した。Gbs1892は、一次構造上相同性が見られないリボース-5リン酸異性化酵素に対して構造類似性を示した。この構造類似性と昨年度決定した基質アナログとの複合体の立体構造、並びに部位特異的変位解析から、Cys72、Thr74及びAsn106がGbs1892の触媒作用或いは基質認識に重要であることを明らかにした。同様に、Gbs1891による還元反応には、Ser150、Tyr163及びLys167がcatalytic triadとして機能することが分かった。 本研究により、グリコサミノグリカンの分解により生じる不飽和ウロン酸(グルクロン酸とイズロン酸)の代謝経路とそれに関わる酵素・遺伝子を初めて同定した。機能不明タンパク質Gbs1892が不飽和ウロン酸に作用する異性化酵素として機能すること、並びにGbs1891がGbs1892の反応により生じた3-デオキシ-D-グリセロ-2,5-ヘキソジウロソン酸に作用するNADH依存型還元酵素であることを明らかにした。Gbs1891の反応により生じる2-ケト-3-デオキシ-D-グルコン酸(KDG)は、UGL遺伝子クラスターにコードされるキナーゼ(KdgK)とアルドラーゼ(KdgA)により、ピルビン酸とグリセルアルデヒド-3-リン酸に代謝されることが示唆された。X線結晶構造解析により、Gbs1892はα/β-構造のサブユニットをもつホモ4量体酵素であり、Gbs1891はα/β/αの3層からなるサブユニットをもつホモ4量体酵素であることが分かった。Gbs1892は、同一の反応を触媒する大腸菌由来KduIと構造類似性を示さなかった。構造機能相関解析により、Gbs1892とGbs1891の触媒作用或いは基質認識に重要なアミノ酸残基を同定した。
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