研究課題
酢酸発酵は,酢酸菌の細胞質膜の外側に存在するアルコール脱水素酵素(ADH)とアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって進行するが,アセトアルデヒド酸化を担う酵素,ALDHは十分に解析されていない。研究期間を通して,酢酸菌Acetobacter pasteurianusのカノニカルALDH(AldFGH)とパラログALDH(AldSLC)の発酵生理学的な役割と酵素としての性状解析を行った。発酵生理学的役割の解明には,カノニカルALDHをコードする遺伝子の1つ(aldH)の破壊株を作製した。この菌株(aldH株)は酢酸発酵を行うことができず,著量のアセトアルデヒドを蓄積した。よって,カノニカルALDHが酢酸発酵に必須であることがわかった。このaldH株を,aldSLCを持つプラスミドで形質転換し,パラログALDHだけを過剰に発現する酢酸菌が酢酸発酵可能であるかどうかを検討した。しかし,野生株と比較すると酢酸発酵可能であるとは言い難い結果となった。よって,パラログALDHは酢酸発酵を保証できないと結論づけた。酵素としての性状解析のために,それぞれの遺伝子破壊株(aldFGH株とaldSLC株)とそれぞれの過剰発現株を作製した。この菌株を解析したところ,カノニカルALDHの方がパラログALDHよりもアセトアルデヒドに対する親和性が高く,より低いpHで最大活性を示すことがわかった。以上の内容を,第65回日本生物工学会大会にて発表した。生化学的解析としてパラログALDHの精製を試みた。精製標品をSDS-PAGEで解析したところ,AldS,AldL,AldCと考えられる3種のバンドを示した。最も小さい分子量のバンドはN末端アミノ酸配列を解析し,AldSであることを確認した。よって,十分に精製できたと考えられた。
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