研究課題
昨年度までに解析されたリパーゼ超誘導剤添加時におけるリパーゼ(LipA)と界面活性保有15kDaタンパク質(EliAと命名)の相互関連性に、機能未知の 17kDaタンパク質(P17)を加えて、超共分泌システムの統一的分子機作を解明するために、難水溶性高級アルコールのstearyl alcohol(SA)あるいは水溶性長鎖エーテルのpolyoxyethylene (20) oleyl ether(Brij 98)を添加して培養し、分泌タンパク質と膜タンパク質のプロテオーム解析を行った。二次元電気泳動とPeptide Mass Fingerprinting(PMF)法により各誘導条件下で特異的に発現する幾つかのタンパク質を同定することができ、この共超発現・分泌ネットワークの統一的理解が可能になると考えられる。P17については、タンパク質の分泌装置を構成するパーツと示唆されているタンパク質と高相同性があった。熱安定性を有するLipAはtert-butyl-3-acetoxybutanoateやphenethylbutanoate等に対する基質特異性が高かったが、部位特異的変異法に加えて分子進化工学的手法による、更なる高立体選択性LipAの創製を試みている。遺伝子操作技術によりLipA高活性発現株の作製に成功した。この高発現株はstearyl alcoholあるいはBrij 98の添加により、野生株とほぼ同量のLipA超発現・分泌能力を有するが、SAの添加で超発現・分泌された高発現株由来LipAの比活性は野生株由来LipAの約15倍に達したことから、SAによってLipAの活性を高める新たな因子が誘導されていることが示唆され、LipA超発現・分泌システムとLipA高活性化システムの組み合わせによる大量生産コンビナトリアルシステム構築の目途が立ったと言える。
2: おおむね順調に進展している
「研究の目的」の達成度について、今年度の研究実施計画に基づいて、リパーゼ(LipA)と界面活性保有15kDaタンパク質(EliAと命名)の超誘導システムの詳細と相互の関連性に加えて、17kDaタンパク質(P17)の機能の一端が明らかになった。超誘導剤を用いた培養分泌外液と膜タンパク質のプロテオーム解析を行い「第1段階:リパーゼ・スーパーインデューサー作用ネットワーク機構の総合的解明」に向けた第2年目の結果を得ることができた。更に、遺伝子操作技術により作製したLipA高活性発現株では、stearyl alcohol (SA) の添加で超発現・分泌された高発現株由来LipAの比活性は野生株由来LipAの約15倍に達したことから、SAによってLipAの活性を高める新たな因子が誘導されていることが示唆され、超発現・分泌システムと高活性化システムによる大量生産コンビナトリアルシステム構築の目途が立ったと言える。これにより「第2段階:このシステムを利用した、改良型高立体選択性リパーゼや他の一般有用タンパク質の大量分泌システム確立」への着実な進展があった。
平成24年度の研究計画の遂行状況はおおむね順調だったので、次年度の研究計画に基づいて研究を実施できると考えられる。
機器備品として、低圧クロマトグラフィーシステムを予定価格より購入できた(当初予定のGEヘルスケア・ジャパン社製・AKTAprime plusと同等機種のバイオラッド社製・BioLogic LPシステムがキャンペーン期間中であったため、より安価に購入済)ことと、研究分担者が使用しなかったため、次年度繰越研究費が生じた。翌年度に請求する研究費と合わせて、結晶化を目指した分泌タンパク質の大量培養・精製のために必要な撹拌型限外濾過装置を購入する予定である。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (10件) 図書 (1件) 備考 (2件)
FEMS Microbiol. Lett.
巻: 339(1) ページ: 48-56
10.1111/1574-6968.12055
J. Gen. Appl. Microbiol.
巻: 未定 ページ: 未定
to be determined
J. Bacteriol.
巻: 194(22) ページ: 6282-6291
10.1128/JB.01544-12
Biosci. Biotechnol. Biochem.
巻: 76(12) ページ: 2267-2274
10.1271/bbb.120556
http://ir.c.chuo-u.ac.jp/researcher/profile/00012450.html
http://www.chem.chuo-u.ac.jp/~celltech/ishizuka/