研究課題
T. caldophilus LDH (TCLDH)の不活性状態(T状態)と活性化状態(R状態)の立体構造を、それぞれ1.8、2.0オングストローム分解能での精密化に成功した。また、同時にこれまで得られたTCLDHとLactobacillus casei LDH(LCLDH)の変異型酵素の機能解析を進めるとともに、これまで得られた結果をさらに精密化した。その結果、TCLDHとLCLDHにはアロステリック構造変化に大きな相違があることが明らかになった。いずれの酵素の場合でも、基質結合に重要なArg171側鎖の方向がアロステリック転移とともに変化する。また、この変化が、Arg171が位置するα2Fヘリクスと、Q軸隣接サブユニットのαC(Q)ヘリクスの接触面の変化によって生じることも共通している。しかし、TCLDHの場合は、アロステリック構造変化の中心がα2FヘリクスのC末端領域にあり、この領域の動きを通してα2Fヘリクスのみが回転する。これに対して、LCLDHの場合は、アロステリック構造変化の中心が、α2FヘリクスのC末端領域だけでなく、P軸を介したサブユニット間連鎖によって、α2G-α3Gループにまで拡大している。その結果、このループと恒常的なサブユニット間水素結合をもつαC(Q)ヘリクスも、α2Fヘリクスと同時に回転運動を行う。Q軸ネットワークは、α2Fヘリクスおよびα2Gヘリクスと、αC(Q)ヘリクスの間に形成されるため、これらの領域がすべて動くLCLDHの構造を活性型に固定する上で有効である。醸造乳酸菌Tetragenococcus halophilusのLDHにも有効性が認められたのは、LCLDHと系統的に近い乳酸菌LDHのためと考えられる。一方、α2Fヘリクスのみしか動かないTCLDHにはQ軸ネットワークはあまり効果的ではなく、α2FヘリクスのC末端領域の位置を活性化状態で安定化するR173Q、R216Lの置換がより効果的であると考えられる。
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Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 439 ページ: 109-114
10.1016/j.bbrc.2013.08.019