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2011 年度 実施状況報告書

超好熱菌低温ショックシャペロンの作用機序

研究課題

研究課題/領域番号 23580121
研究機関関西学院大学

研究代表者

藤原 伸介  関西学院大学, 理工学部, 教授 (90263219)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードarchaea / chaperonin / cold stress
研究概要

低温ショック分子シャペロニンCpkAと熱ショック分子シャペロニンCpkBはアミノ酸配列の保存性が高く(同一性77%)、C末端にのみ顕著な差異がみられる。このC末端側領域をエピトープとして作られた抗CpkA抗体,抗CpkB抗体はそれぞれのシャペロニン分子の認識には有効であるが、この領域はシャペロニンリングの内部(底)に位置するため、標的分子が作用した状態でのプルダウン実験には使うことができなかった。そこでシャペロニンリング表面を認識する抗体(抗Cpkリング抗体)をあらたに調製した。熱ショック分子シャペロニンCpkBの発現を欠損させた変異株(DB1)株を60℃で培養し、抗Cpkリング抗体でプルダウンを行った。捕捉されたタンパク質のうち、TrpCタンパク質に注目し、試験管内での再生実験を行った。様々な変性TrpCを用意し、CpkA、CpkBの再生促進効果を検討したところ、CpkAにのみ効果が認められた。またTrpCの抗体を用意し、この抗体によるプルダウン実験を行ったところCpkAのみが共沈殿した。以上のことから変性途上のTrpCはCpkAによって認識され再生は促進されていると判断される。本結果はAppl.Environ.Microbiol.にて公表した。また、低温シャペロニン誘導機構を解明するために、プロモーター検索用プラスミド(promoter-probe plasmid)の構築を試みた。プロモーター検索用プラスミドはThermococcus属レプリコンであるpTK01を利用し、レポーターに耐熱性キチナーゼ遺伝子を用いた。ところがキチナーゼ遺伝子の転移組換えが起こり、この遺伝子がレポーターとして適していないことがわかった。現在別種の好熱菌Pyrobaculum calidifontis由来のカタラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子を用い再構築を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

低温ショック分子シャペロニンCpkAと熱ショック分子シャペロニンCpkBの基質探索実験は平成24年度に計画していた内容であるが、当初の計画以上に進展し成果をあげることができた。一方、遺伝子の発現制御機構を解明するための実験は、平成23年度に予定していた内容が完了していない。ただし、レポーター遺伝子に当初予定していた遺伝子とは異なるもの(カタラーゼ遺伝子)を用いることでレポーターアッセイ系を構築することに成功している。本システムによりシスエレメントの絞り込み実験は容易に行えるものと考えている。低温誘導型RNAヘリカーゼに関しては誘導に必要な上流領域の確認が完了しており、平成24年度に所定の成果が得られると思われる。

今後の研究の推進方策

低温ショックシャペロニンcpkAの誘導機構に関してはシスエレメントの絞り込みを完了させる。また、低温誘導型RNAヘリカーゼであるTK0306は他のRNAシャペロンと同様にRNAヘリカーゼの活性が確認されている。この遺伝子の欠損は支配下の遺伝子の発現量に影響を与えることが予想される。特に60℃で培養したTK0306欠損株で、発現が減少した遺伝子はTK0306の影響を受けている可能性が高い。そこでマイクロアレイを用いたトランスクリプトーム解析と、質量分析(LC-MS)を利用したプロテオーム解析を並行して行い、TL0306の支配下にある遺伝子の絞り込みを行う。またこの遺伝子についても誘導機構に関してはシスエレメントの絞り込みを行う。

次年度の研究費の使用計画

今年度は研究が予定より順調に進行したことにともない、予定していた出張の一部が必要なくなったため未使用額(202,571円)が生じた。この未使用額は平成24年度の生化学実験用の消耗品費に充てたい。特にタンパク質の精製に必要な高速液体クロマトグラフィー用のカラムが劣化しており、追加購入が必要になると思われる。なお、研究遂行に必要な実験機器・設備は揃っており、平成24年度にあらたに購入が必要なものはない。また消耗品として制限酵素等のDNA組換え実験用試薬に加えて、マイクロアレイ解析のための蛍光試薬が必要になる。マイクロアレイ解析には、データ集計の補佐にアルバイトを雇用する予定であり、謝金を計上した。初年度の研究は極めて順調に推移しており、これらの成果は順次国内の学会で発表したい。旅費として学会発表(生化学会、農芸化学会、生物工学会)を視野に入れ、計上した。また論文投稿を行うにあたり、英文校正代金、投稿代金をその他として加えている。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Indole-3-glycerol-phosphate synthase is recognized by a cold-inducible group II chaperonin in Thermococcus kodakarensis.2012

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara,S., Gao,L.
    • 雑誌名

      Appl.Environ. Microbiol.

      巻: 78 ページ: 3806-3815

    • DOI

      10.1128/AEM.07996-11.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] どうして核酸は変性するの?2011

    • 著者名/発表者名
      藤原伸介
    • 雑誌名

      生物工学会誌

      巻: 189 ページ: 200-203

    • 査読あり
  • [学会発表] Effect of cold-stress inducible chaperonin on specific substrates in hyperthermophile2012

    • 著者名/発表者名
      藤原伸介
    • 学会等名
      日本農芸化学会2012年度大会(招待講演)
    • 発表場所
      京都女子大学
    • 年月日
      2012年3月25日
  • [学会発表] 超好熱菌Thermococcus kodakarensis の低温誘導型RNAヘリカーゼの系統学及び遺伝学的解析2012

    • 著者名/発表者名
      長岡英里子,島田陽子,福田青郎,今中忠行,藤原伸介
    • 学会等名
      日本農芸化学会2012年度大会
    • 発表場所
      京都女子大学
    • 年月日
      2012年3月24日
  • [学会発表] ポリアミンによる超好熱菌の生き残り戦略2011

    • 著者名/発表者名
      藤原伸介
    • 学会等名
      第84回日本生化学会大会(招待講演)
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      2011年9月21日

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公開日: 2013-07-10  

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