研究課題/領域番号 |
23580123
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
藤井 隆夫 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (80165331)
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研究分担者 |
西山 孝 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (00425331)
平 大輔 崇城大学, 生物生命学部, 助教 (00569890)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 嫌気性アンモニア酸化 / anammox / ヒドラジン合成 / へムタンパク質 / 脱窒 |
研究概要 |
嫌気性アンモニア酸化(anammox)の無細胞反応系を構築するため、仮定されている反応機構を参考に、とくに各素反応のなかで、未知で生化学反応としては報告のない、謎とされるヒドラジン合成反応に注目し、それを触媒するヒドラジン加水分解酵素(HH)を中心に研究を行った。具体的には以下の実験を行い、それぞれに有益な結果を得た。1. anammox 菌から予想されるHH を精製した。本酵素は180 kDaのヘテロ3量体へム蛋白質で、反応中間体と予想できるNOとの相互作用は確認できなかったが、同じく反応中間体と予想できるNH2OH, HNOとの相互作用が認められた。しかし、NH2OHあるいはHNOをアンモニアと組み合わせた基質として反応を行ったが、HHによるヒドラジン合成は起こらなかった。2. HHとは別に多量発現しているヘテロ2量体へム蛋白質(NaxLS) は、 その一次構造に他のタンパク質との相同性がなく、しかも負の酸化還元電位を持つなど、従来の電子伝達のc型へムとは性質が全く違っている。そこで、上記の実験と並行して NaxLS の結晶構造解析を行った。その結果、両サブユニットは大きな接触面積を持ち、強く結合していた。サブユニットそれぞれにclass Iとclass IIのヘムを保持し、両へムとも、非常にまれな配位環境であるCys/His配位をしていた。これが大きな負の酸化還元電位の原因と判明した。3. HH の触媒反応に NaxLS が影響 を与える可能性も考えられるので、HH の活性発現因子の一つとして NaxLS を添加による、ヒドラシジン生成活性への影響を調べる実験に取りかかった。今後、最適な反応条件を引き続き探索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画(平成23年度)のほぼ80%は達成できた。未達成な点は、HH の活性発現因子の一つとして NaxLS を添加による、ヒドラシジン生成活性への影響を調べる実験で、、最適反応条件をまだ明らかにはできていない。来年度以降の課題として残った。
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今後の研究の推進方策 |
おもに平成24年度について以下の実験を行う。1. HH にNaxLS を添加して、ヒドラジンの生成反応が起こるか確認する。これには、窒素の安定同位体を用い、質量数15のアンモニアと質量数14のヒドロキシルアミンを基質とし、窒素間の結合をMALDI-TOFMASSによって質量数29のヒドラジン N2H4 が生成することにより行う。同時に並行して、反応pH、基質濃度、還元剤の有無等を変化させヒドラジン生成反応の最適条件を決定する。2. ヒドラジンの生成反応の次反応であるヒドラジンからの脱窒について、この反応を触媒しているヒドラジン酸化酵素(HZO)およびヒドロキシルアミン酸化還元酵素が、当研究室でも精製され反応が確認されているが、膜にあるとされる生理的な電子受容体と電子伝達については、不明である。そこで、膜にある最初の電子受容体を同定する。3. 上記の反応中間体ヒドロキシルアミンの合成反応について、亜硝酸から最初に亜硝酸還元酵素(Nir)によって,NOが生成することを既に確認したが、NOからのヒドロキシルアミンの合成反応を解明する必要がある。これについては、複数の候補タンパク質を選択しているので、それについて一つ一つ触媒能を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
おもに、物品費として試薬類、ガラス・プラスチック類の購入費用として700,000円を使用する予定である。
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