研究課題/領域番号 |
23580124
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
鈴木 チセ 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所畜産物研究領域, 上席研究員 (80343820)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 莢膜多糖 / ラクトコッカス属乳酸菌 / マクロファージ / 蛍光標識ビーズ |
研究概要 |
Lactococcus属乳酸菌の表面を覆う夾膜多糖(CPS)が、それらを認識した免疫担当細胞にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするため、まずCPS生産菌および非生産菌を含むLactococcus属菌株をマウス由来マクロファージ様細胞J774.1株およびマウス腹腔マクロファージに添加し、サイトカイン応答および一酸化窒素産生に及ぼす影響を解析した。次にCPSで修飾した蛍光ビーズを用いた疑似菌体モデル系を構築した。グルコース添加酵素分解スキムミルク培地で培養したC59株、DRC2株菌体を0.1M炭酸ナトリウム処理することにより得られたCPSをDNase、RNas処理、プロテアーゼ処理を行った後、エタノール沈殿、透析等により精製した。精製CPSをビオチン化し、ストレプトアビジン標識(蛍光)ビーズへ結合させた。マウス由来マクロファージ様細胞J774.1株に添加し、2時間、5時間後フローサイトメータにより蛍光標識ビーズを貪食したマクロファージをカウントすることにより被貪食能を比較した。本方法蛍光標識ビーズを貪食した個数毎に解析が可能であり、DRC2株のCPS修飾ビーズは有意に被貪食能が高く、ビーズをとりこまない細胞数が少なかった。C59株のCPS修飾ビーズはBSA修飾したコントロールビーズと差がなかった。蛍光標識した菌株についても菌株による被貪食能のちがいを明らかにした。ビオチン化の方法について多糖のアミノ基を標識する方法と還元糖を標識する二つの方法を検討した結果、菌株によって各々の方法によるビオチン化効率が異なっており、おそらくは糖組成や糖の修飾のちがいによるものと考えられる。現在、CPS調製に用いる菌体の培養時間と被貪食効率を検討している。また、CPS変異株取得のため、ルテニウムレッド感受性が変化した変異株についてトランスポゾン挿入変異の解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度計画のうち、1.精製CPS修飾ビーズによる疑似菌体モデル系の構築、2. CPS修飾ビーズのマクロファージの被貪食能へ効果、については順調に進捗し、蛍光ビーズへのCPS修飾方法をほぼ確立した。またマクロファージによるCPS修飾ビーズの貪食をフローサイトメーターを用いて解析することが可能となった。4. CPS非生産株の作出、については、CPS生産株への遺伝子破壊プラスミドの導入効率が非常に低く、遺伝子破壊株が取得できていない。したがって、5.CPS生産株、CPS非生産株を投与したマウスの免疫活性の解析、が実施できない状況である。そこで24年度に予定していたCPS変異株の作出を前倒しで行い、ルテニウムレッド感受性が変化した変異株の解析を行っている。マウスを用いた3. CPS修飾ビーズがマウス脾臓細胞に及ぼす影響、6.NK細胞の活性測定、については次年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度行えなかった3.CPS修飾ビーズがマウス脾臓細胞や腹腔マクロファージに及ぼす影響、について本年度確立した方法を用いて解析する。CPS修飾ビーズを貪食した細胞のサイトカイン応答等についてもELISAを用いて解析する。またルテニウムレッド感受性が変化した変異株について、トランスポゾン挿入位置の確認を行い、どの遺伝子へのトランスポゾン挿入によりルテニウムレッド感受性が変化したのかを明らかにする。同様にルテニウムレッド染色性の変異株を取得し、トランスポゾン挿入位置の決定を行う。これらのCPSの性質が変化したCPSを用いて変異CPS修飾ビーズを用いた実験を本年度同様に行う。CPSの性質が異なる変異株で得られたら、マウスへの投与を行い、CPSの違いによる免疫細胞の応答について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費・旅費・謝金等に使用する。本年度は震災やそれに対応した節電等のために実験が滞り、本研究課題への取り組みがやや遅れた。次年度使用額1,235,957円は、高額なELISAキットや抗体等の購入を伴うマウスを用いた投与実験が遅れたこと、遺伝子工学試薬等の試薬を研究室の常備品から効率的に運用したこと等の理由で発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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