研究課題
糸状菌の休眠二次代謝遺伝子を強制的に覚醒させ、利用・解析可能にすることを目的に、モデル植物病原糸状菌であるイネいもち病菌を用いて環境応答情報伝達系因子に注目した研究を行ってきた。昨年度までに、環境応答情報伝達系のかく乱によるネクトリアピロン類とテヌアゾン酸の生産誘導に成功し、ネクトリアピロンの生合成遺伝子を見出すとともにテヌアゾン酸の生産制御に関与する因子を同定してきた。今年度、DNAマイクロアレイ等を用いた解析によりテヌアゾン酸の生合成遺伝子クラスターを同定することに成功した。テヌアゾン酸生合成遺伝子は新たなタイプの二次代謝産物生合成酵素をコードしていた。また、p38 MAPKとHPtに対する結合化合物を化合物アレイにより取得し、p38 MAPK結合化合物がテヌアゾン酸生産誘導活性を示すことを見出した。イネいもち病菌以外の糸状菌であるテルペンドール生産菌とシラクタエン生産菌でLaeAオルソログの遺伝子破壊を行うと、それぞれテルペンドールとルシラクタエンの生産が消失した。この結果から、テルペンドールとルシラクタエンはテヌアゾン酸と同様にLaeAオルソログにより生産制御されていることが明らかとなった。次に、テルペンドール生産菌でp38 MAPK遺伝子を破壊したところ、テルペンドール生産が低下し、イネいもち病菌でp38 MAPK遺伝子破壊を行うとテヌアゾン酸の生産誘導が引き起こされるのとは対照的な結果になった。また、ルシラクタエン生産菌において、ハイグロマイシンがルシラクタエンとメラニンの生産を誘導することを見出した。ハイグロマイシンはイネいもち病菌においても、メラニン等の生産を誘導した。以上の結果より、二次代謝産物生産制御メカニズムには共通の部分と共通ではない部分があることが明らかになった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Letters in Applied Microbiology
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Journal of Mass Spectrometry
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