研究課題/領域番号 |
23580126
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
坂本 光央 独立行政法人理化学研究所, 微生物材料開発室, 協力研究員 (50321766)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | Bacteroides / MLSA / dnaJ / gyrB / hsp60 / recA / rpoB / 16S rRNA |
研究概要 |
本年度は、Bacteroides属を含む嫌気性グラム陰性桿菌(Barnesiella属、Butyricimonas属、Odoribacter属、Parabacteroides属、Paraprevotella属、Porphyromonas属、Prevotella属およびTannerella属など)約100種を対象に、16S rRNAおよびhsp60遺伝子以外のhouse keeping genes(dnaJ、gyrB、recAおよびrpoBなど)の配列を決定し、多遺伝子座配列解析(Multi Locus Sequence Analysis: MLSA)を試みた。MLSAは、まず初めにBacteroides属を対象とした。各遺伝子の種間類似度を比較したところ、gyrB遺伝子が64.4-100%と最も低い種間類似度を示し、rpoB遺伝子が74.0-100%と最も高かった。gyrB遺伝子に次いで、dnaJ遺伝子(67.9-100%)、recA遺伝子(72.1-100%)そしてhsp60遺伝子(72.9-100%)の順に類似度は低かった。また、6つの遺伝子を用い、スプリット分解解析法でBacteroides属の系統を再構成した結果、明確な網状根が観察された10のクレードが見いだされた。各クレードに属する種は遺伝学的や生態学的な性質が類似していた。特にPyogenesクレードに属する3種は、同一種と考えられた。これらの結果を基にBacteroides属における「種」とは、6つの遺伝子の塩基配列を結合したMLSAによる類似度が97.5%以上を示す集団として定義することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、Bacteroides属以外の分類群についても各ハウスキーピング遺伝子の塩基配列の決定を行い、MLSAの準備を進めている。しかし、一部の分類群の特定の遺伝子、特にPorphyromonas属とPrevotella属のdnaJおよびrecA遺伝子のPCR増幅、そして塩基配列の決定がうまくいっていない。このことは、言い換えればBacteroides属と比較して、Porphyromonas属とPrevotella属においてはdnaJおよびrecA遺伝子の塩基配列が種間によって非常に多様(種間解像度が高い)であるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までに決定できなかった対象菌群および遺伝子を対象に塩基配列を決定し、MLSA法によりデータ解析を行う。さらに既に全ゲノム情報が解析された菌種を対象にaverage nucleotide identity(ANI)値を計測し、DNA-DNA hybridization(DDH)法およびMLSA法との関連性を検討する。また、対象菌群において分類学的に問題とされている菌種で未だ全ゲノム配列が解析されていない菌種は、可能な場合は全ゲノム配列を決定する。以上の結果を総合的に検討し、菌種の再定義を行なう。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年度までに決定できなかった対象菌群および遺伝子の塩基配列決定などに次年度使用額を充てる。平成24年は菌株の全ゲノム配列の決定も計画しており、次世代シークエンサ関連試薬を新たに算定している。国内旅費は、研究成果(日本細菌学会、日本微生物資源学会を予定)に充てている。一方、外国旅費は、現在のところ検討中である。平成24年度は、得られた成果を英文学術論文として公表するために、外国語論文校閲料及び研究成果投稿料を算定している。
|