研究課題/領域番号 |
23580126
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
坂本 光央 独立行政法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 研究員 (50321766)
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キーワード | Bacteroides / MLSA / dnaJ / gyrB / hsp60 / recA / rpoB / 16S rRNA |
研究概要 |
本年度は、前年度までに全ゲノム配列の解析がうまくいっていない菌種などを中心にゲノム解析を行った。その結果、一部の菌株を除いてドラフトゲノム解析が終了し、先行して解析が行われたPorphyromonas crevioricanis JCM 15906TとJCM 13913(旧Porphyromonas cansulciの基準株)の2株と合わせると、Bacteroides属16種19株、Porphyromonas属6種8株およびPrevotella属26種26株からなる合計48種53株の嫌気性グラム陰性桿菌のゲノム情報を得ることができた。既に報告したP. crevioricanisの2株について詳細な解析を行ってみると、2株間におけるaverage nucleotide identity(ANI)値が99.5%、また、in silicoによるDNA-DNAハイブリダイゼーション値が96.5%と、既報の従来法によるDNA-DNAハイブリダイゼーションの結果を支持する結果が得られた。一方で、Bacteroides pyogenes JCM 6294T、JCM 6292(旧Bacteroides suisの基準株)およびJCM 10003(旧Bacteroides tectusの基準株)についても同様な解析を行ってみると、JCM 6294TとJCM 6292の2株間では99.9%(ANI)と100%(in silico)と高値を示し、従来法の結果とよく一致していたが、前述の2株のどちらか1株とJCM 10003株の2株間ではANI値が94.5%と従来法のDNA-DNA相同性値70%に相当するANIの閾値95%に近接した数値を示し、また、in silicoによる解析結果では64.7%と亜種レベルと考えられる数値を示した。従来法のDNA-DNA相同性値とANI値の関係を論じるには更なるデータの解析が必要であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は前年度までに決定できなかった菌種を中心にゲノム解析を行い、得られたゲノム情報を用いてANI値などを算出することであった。結果としては、一部の菌株を除き53株のドラフトゲノムの解析が終了した。また、ANI値を算出ために既製のANI解析プログラム「JSpecies」を活用することができ、従来法のDNA-DNA相同性値などとANI値の関係を論じる基礎を作り上げることができたため、達成度としてはおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム解析で得られた遺伝子情報ならびに既に公開されている遺伝子情報を精査して標的とするhouse keeping geneを抽出し、Muti Locus Sequence Analysis(MLSA)解析を行う。また、ANI解析プログラム「JSpecies」を活用してANI値を算出し、DNA-DNA相同性値、ANI値およびMLSAの関連性より嫌気グラム陰性桿菌における種を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、全ゲノム配列の解析がうまくいっていない菌種などを中心に再度ゲノム解析を行い、その結果などを基にaverage nucleotide identity(ANI)値の計測を行うとともに国際会議(小委員会)において発表する予定だったが、予定していた一部の菌株のゲノム解析が順調に進まず、また、予定していた会議が平成25年度は開催されず、平成26年度に変更になったために、未使用額が発生した。 平成26年度は、ゲノム解析などで得られた遺伝子情報を基にMuti Locus Sequence Analysis(MLSA)解析を行い、国際会議および論文での発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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