研究課題/領域番号 |
23580131
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
片岡 邦重 金沢大学, 物質化学系, 教授 (40252712)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バイオ燃料電池 / マルチ銅オキシダーゼ / ラッカーゼ / 酵素電極 / 機能改変 |
研究概要 |
バイオ燃料電池の実用化に資するマルチ銅オキシダーゼの開発を目標に,以下の研究を行った。1.新規ラッカーゼの発現系構築:偏性嫌気性細菌Clostridium beijerinckiiのラッカーゼ(CbLac)と,貯穀害虫でモデル甲虫であるコクヌストモドキTribolium castaneumのラッカーゼ(TcLac2)について,構造遺伝子の全合成または部分合成を行い,異種発現系の構築を試みた。CbLacでは大腸菌を宿主として活性を持つタンパク質の発現に成功し,その諸性質を明らかにした。分光学的性質から,CbLacはこれまでマルチ銅オキシダーで報告の無いタイプI銅部位部位を持つと考えられ,改変ベースタンパク質として有望であることが明らかになった。TcLac2では大腸菌及び昆虫培養細胞を宿主としたタンパク質発現に成功したが,銅を含まず活性を示さないアポタンパク質であった。2.変異導入による既存酵素の機能向上:発現系を有する大腸菌の一価銅オキシダーゼ(CueO)の電子受容部位であるタイプI銅部位の電位制御を目的として,その配位残基His443とAsp439間の結合の切断(Asp439Ala)と,配位残基Met510の置換を同時に導入した二重変異型酵素を作製しその性質を検討した。Asp439Ala/Met510Leu二重変異体では,野生型酵素の100倍以上の触媒活性を示すことが明らかになり,タイプI銅部位の電位が正にシフトした。逆にAsp439Ala/Met510Gln二重変異体では,タイプI銅部位の電位が負にシフトすると共に活性を失った。以上の様に,変異導入によりタイプI銅部位の電位と酵素活性を制御することに成功し,マルチ銅オキシダーゼの酵素機能向上に対する方法論を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度研究計画に記載した,新規マルチ銅オキシダーゼの異種発現については,嫌気性細菌Clostridium beijerinckiiのラッカーゼ(CbLac)の遺伝子合成と大腸菌発現系の構築に成功し,機能解析に着手できた。しかしながら,コクヌストモドキTribolium castaneumのラッカーゼ(TcLac2)では活性なタンパク質がまだ得られていない。また,平成24年度の研究計画を前倒しして,既存のマルチ銅オキシダーゼCueOの機能改変を行い,高活性化と電位の制御に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度,大腸菌を宿主として用いる異種発現に成功したClostridium beijerinckii由来の新規ラッカーゼ(CbLac)について,タイプI銅活性中心近傍への変異導入を行うなど詳細な機能解析と機能改変を行う。特に,タイプI銅軸配位子を同定した上で,CueOで確立した電位制御の方法論を適用しCbLacの高活性化を試みる。活性を持つコクヌストモドキTribolium castaneumのラッカーゼ(TcLac2)の発現系構築も継続して実施する。さらに,既存酵素の高機能化を目標に,大腸菌のCueOに加え枯草菌の内性胞子のコートタンパク質の耐熱性マルチ銅オキシダーゼであるCotAを対象に,高活性化を目指す予定である。また,連携研究者である京都大学加納健司教授の指導の下に,これら新規酵素及び高機能化改変酵素を対象に,カソード電極特性の解析とバイオ燃料電池の試作・検討,兵庫県立大学樋口芳樹教授の指導の下,X線結晶構造解析を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
変異導入等に用いるプライマーの合成及びDNA配列解析など遺伝子操作関係の委託費用を含めた各種試薬の購入費,酵素精製用レジン,ガラス及びプラスチック製実験器具等の購入費を消耗品として計上する予定である。また,連携研究者である京都大学大学院農学研究科・加納健司教授および兵庫県立大学大学院生命理学研究科・樋口芳樹教授との研究打ち合わせのための旅費と,国内学会等における成果発表のための旅費,さらに,研究成果公表のための印刷費を計上する。
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