研究概要 |
バイオ燃料電池の実用化に資するマルチ銅オキシダーゼの開発を目標に,平成25年度には以下の研究を行った。 1.Clostridium beijerinckii由来の2ドメイン型ラッカーゼ(CbLac)の異種発現と機能解析:CbLacはタイプI銅の酸化還元電位が低いため基質の酸化活性が低く,バイオ燃料電池のカソード極に応用するためにはタイプI銅の酸化還元電位を正にシフトさせる必要があることが明らかになった。Asp281がCbLacのタイプI銅軸位の配位残基であると示唆されたことから,この残基をメチオニンに置換する変異導入を行なったが,変異体は銅を含まないアポ型酵素として発現し,ベクター,ホスト,培養条件等を検討したが活性を持つ変異型酵素は得られなかった。 2.変異導入による既存酵素の機能性向上:昨年度に引き続き大腸菌の一価銅オキシダーゼCueOの排水チャネル近傍への変異導入を行ない,Gln451と共にPhe106が排水チャンネルを構成することを明らかにした。こられの残基を含む排水チャネルへの変異導入により酵素活性を制御できる可能性を示した。また,ビリルビンオキシダーゼのタイプI銅近傍に存在するアミノ酸残基,Asn197, Ser198, Ser231を,Phe, Glu, Hisなどに置換した変異型酵素を作製した。Asn197Phe, Ser198Pheではアミノフェノール型基質に対する活性が野生型酵素に比べて増大するなど,基質特異性が変化することが明らかになった。また,Ser231Asp, Ser231Gluではフェノール型基質に対する相対活性が増大し,Ser231が基質との相互作用に重要であることがわかった。以上の結果から,ビリルビンオキシダーゼにおけるタイプI銅周辺のこれらアミノ酸残基は,電極との反応性を向上させる変異導入の新たなターゲットとなり得ると考えられる。
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