研究課題/領域番号 |
23580134
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
矢中 規之 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (70346526)
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研究分担者 |
加藤 範久 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (20144892)
和田 正信 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (80220961)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | C2C12細胞 / glycerophosphocholine / choline / 骨格筋細胞 / 筋分化 |
研究概要 |
以前、培養筋芽細胞株C2C12細胞におけるGDE5の発現抑制によって、myogeninの発現や筋管形成が著しく促進することを明らかにしていることから、GDE5の発現抑制による骨格筋細胞の分化誘導効果のメカニズムの解明に着手した。まず、GDE5が細胞内のglycerophosphocholine(GroPCho)を分解し、choline(Cho)を生成する可能性について、LC/MS法を用いた細胞内GroPCho、およびChoの測定系を構築した。C2C12細胞におけるGDE5の発現抑制によって、細胞内のGroPChoは著しく蓄積し、さらにChoは減少したことから、in vitroのみならず、細胞内においてもGroPChoからChoへの変換に関与することが示された。また、GDE5の発現抑制においてrapamycinの投与によってmyogeninの発現や筋管形成が抑制され、GDE5の発現抑制による筋分化促進作用におけるmTOR系の関与が示唆された。さらに、DNA microarray法を用いて、C2C12細胞におけるGDE5の発現抑制によって、IGF2遺伝子やproteoglycan遺伝子の著しい発現誘導が認められた。一方、動物細胞における GDE5の過剰発現によって,GroPChoの分解活性を確認しており、GDE5のN末端にHis tagあるいはstrep tagを融合させてHEK293T細胞で過剰発現させ,アフィニティ精製を試みたが、組換えGDE5タンパク質の精製は困難であった。そこで、天然型組換えGDE5タンパク質を発現させ、イオン交換クロマトグラフィーによって部分精製を行い、GroPChoの分解活性の確認が終了した。同組換えGDE5タンパク質のGroPChoの分解活性を利用して,化合物のスクリーニングに着手する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養筋芽細胞株C2C12細胞のGDE5の発現抑制による筋分化誘導効果のメカニズムの解明において、遺伝子解析など順調に推移している。一方、LC/MS法を用いたglycerophosphocholine(GroPCho)、およびcholine(Cho)の測定系の構築を行った。本測定系によって細胞内におけるGroPChoからChoへの変換にGDE5が関与することが示され、筋細胞分化との関連性について貴重な情報を与えるものであり、また阻害物質のスクリーニング法においても利用可能であり、大きく貢献するものである。動物細胞におけるN末端tagを付加したGDE5の過剰発現によってアフィニティ精製を試みたが、組換えGDE5タンパク質の精製は困難であった。しかし、天然型組換えGDE5タンパク質のイオン交換クロマトグラフィーによる部分精製に到達し、GroPChoの分解活性を指標とした化合物のスクリーニング法に利用可能であることが示された.
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今後の研究の推進方策 |
GDE5阻害による筋分化誘導システムの解明においては、筋芽細胞株C2C12細胞に与える影響のみならず、筋分化能を有さないマウス線維芽細胞株NIH-3T3細胞において、siRNA法によってGDE5を発現抑制させ、DNA microarray法による遺伝子解析を行う。C2C12細胞の遺伝子解析では,筋細胞分化促進作用に伴った二次的な遺伝子発現変動が多く混在するため,遺伝子発現を比較解析することによってGDE5阻害に基づく一次的な因子群の絞り込みを行う。GDE5阻害活性による化合物スクリーニングに着手する。LC/MS法を用いたglycerophosphocholine(GroPCho)、およびcholine(Cho)の測定系を利用する。富山大学・和漢医薬学総合研究所の生薬由来化合物ライブラリー(80種),および生薬エキスライブラリー(120種),また理研NPDepoの標準化合物ライブラリー(80種,Authentic Library)をスクリーニングに用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
GDE5阻害による筋分化誘導システムの解明においては、マウス線維芽細胞株NIH-3T3細胞を用いてsiRNA法によってGDE5を発現抑制させ、DNA microarray法による遺伝子解析を行う。その際のLC/MS法を用いたcholine代謝物の解析やDNA microarray法による遺伝子解析などの消耗品類に使用する。GDE5阻害活性による化合物スクリーニングにおいても、LC/MS法による測定に関わる消耗品類、また酵素精製に関わる消耗品類に使用する。
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