研究課題/領域番号 |
23580135
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
足立 収生 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (20027189)
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研究分担者 |
赤壁 善彦 山口大学, 農学部, 准教授 (20274186)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マテ茶 / クロロゲン酸 / キナ酸 / カフェ酸 / シキミ酸 |
研究概要 |
マテ茶はアルゼンチンはじめ南米大陸で飲用されている高濃度にクロロゲン酸(CHA)が含まれる茶として知られている。研究代表者はコーヒー粕に含まれるCHAに糸状菌の酵素を作用させてキナ酸とカフェ酸に効率よく分離したのち、キナ酸をシキミ酸へ導く新規な技術を確立した。シキミ酸はタミフル合成原料として有用であり、その効率的製造法が待たれていた。マテ茶はコーヒーかすに比べ、脂質や着色物質含量が低いために、マテ茶に含まれるCHAからクロロゲン酸水解酵素(CHase)によってキナ酸やカフェ酸を単離する方が有利であると考えた。アルゼンチン(亜国)政府機関と亜国研究者の協力を得て、マテ茶原料を大量に供与されて、研究を開始した。ほどなく本法の有用性が明らかになって基盤研究©に採択された。研究経費の関係から、平成22年度公益法人発酵研究所一般研究助成と平成23年度JST探索タイプ研究助成(A-STEP)も利用して、アルゼンチンで延べ75日滞在して研究を行った。コーヒー粕の場合に比べ、熱湯に浸漬するだけでマテ茶葉からのCHAの抽出は容易であった。食品産業廃棄物となって処理に経費を要するコーヒー粕に比べ、マテ茶残渣の処理も容易であることを確認した。ついで、糸状菌のCHase活性を損なうことなく45˚Cで30分間熱処理すると、糸状菌の生存能は喪失されるが、CHaseが菌糸体表面に保持された一種の固定化触媒となることを見出した。熱処理した糸状菌と熱水抽出したマテ茶抽出液とを反応させることで、マテ茶抽出液中のCHAは容易にキナ酸とカフェ酸へ分解されることを見出した。これらの事実は本研究の根幹をなす知見であり、今後の研究成果の具体的結実を約束するものと評価できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者によるコーヒー粕を使用したキナ酸からシキミ酸の新規な製造法は従来法に比べて、回避不能な代謝調節による負の因子も見られない点が、学会誌論文賞を受賞するなど、各方面から高く評価された。しかしながら、コーヒー粕に潜在的に含まれる高濃度の脂質と着色物質がイオン交換樹脂の再生を不能にするほか、種類、産地、加工法などで含まれるCHA含量は変動する。コーヒー豆に限定されているコーヒー粕の使用に比べ、マテ茶では葉ばかりでなく枝や茎など茶樹全体にCHAが含まれ、マテ茶の価格も極めて廉価な原料であることに加え、CHaseと反応させるには好適な抽出液を提供できる。容易に酵素反応によってキナ酸とカフェ酸が製造できることは、他に例をみない利点であり、今後克服しなければならない隘路は見当たらないことが最大の理由と言える。
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今後の研究の推進方策 |
CHaseを含む熱処理菌糸体を固定化触媒として、さまざまな形状の反応槽でCHAの加水分解を検討する。亜国政府機関からのマテ茶材料に無償提供を受けて、本研究で得られた技術を亜国へ技術移転できるように、亜国研究者と政府機関の協力を得て研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年4月~5月に約30日間アルゼンチンへ渡航して、亜国研究協力者と協同研究を行う。マテ茶を原料にしたキナ酸とカフェ酸の製造に関する本研究での最初の論文を投稿する。国内学会(日本農芸化学会大会、平成25年3月、東北大学)において研究成果の口頭発表を予定している。上記に必要な経費以外に、恒常的な分析試薬、ガラス器具類、プラスチックなどの消耗品の購入を予定している。
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