研究課題/領域番号 |
23580136
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
内海 俊彦 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20168727)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | N-ミリストイル化 / タンパク質脂質修飾 / バイオマーカー探索 / 細胞情報伝達 / タンパク質翻訳後修飾 |
研究概要 |
これまでに確立した、ヒトcDNAリソースから、タンパク質N末端10アミノ酸の配列を用いて無細胞タンパク質合成系により脂質修飾タンパク質を同定する手法に、2種のタンパク質N-ミリストイル化予測プログラムを組み合わせたバイオインフォーマティクスの手法を加え、より多くのヒトcDNAから、高い確率で新規のN-ミリストイル化タンパク質を同定する実験手法を確立した。 この手法を約4,500個のヒトcDNAクローン(KOP cDNAクローン)に適用し、20個もの新規N-ミリストイル化タンパク質を同定した。これらの中には、多数の細胞情報伝達関連タンパク質や、がんをはじめとする疾患との関連が示唆されているタンパク質が含まれていた。さらにこれらのタンパク質に生ずるN-ミリストイル化の機能について検討を行った結果、これらのタンパク質のN-ミリストイル化は、タンパク質の原形質膜、あるいは小胞体、ゴルジ体、エンドソームといった細胞内小器官の膜への局在を指令することによりタンパク質の特異的機能発現に寄与していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに確立した無細胞タンパク質合成系を用いた実験系にバイオインフォーマティクスの手法を加え、より多くのヒトcDNAから、高い確率で新規のN-ミリストイル化タンパク質を同定する実験手法を確立しヒトの疾患や細胞情報伝達と関連した多数の生理活性タンパク質を含む20個の新規ヒトN-ミリストイル化タンパク質の同定に成功しており、申請書に記載した「新規のN-ミリストイル化された疾患関連、情報伝達関連タンパク質を同定する。」という「研究の目的」は十分に達成されたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の本研究で見出した、疾患や細胞情報伝達に関与すると予測される新規N-ミリストイル化タンパク質について、遺伝子導入細胞および各種のがん細胞株を用いて、以下の [1]~[3] の方法によりタンパク質機能発現におけるN-ミリストイル化の役割を明らかにし、がんを始めとする疾患との関連について解析するとともに、バイオマーカーとしての利用の可能性について検討する。[1] 新規N-ミリストイル化タンパク質cDNAのヒト由来培養細胞への遺伝子導入に伴う細胞増殖、細胞形態変化、細胞死等の細胞の表現型の解析[2] N-ミリストイル化を阻害したG2A変異体およびN-ミリストイル化阻害剤を用いたタンパク質機能発現におけるN-ミリストイル化の機能解明 [3] RT-PCR法による各種臓器由来がん細胞での発現レベルの解析と、RNAi法およびN-ミリストイル化阻害剤を用いたがん化とN-ミリストイル化の関連性の解析 これら [1]~[3] の解析により得られた実験結果を総合的に評価し、新たに見出されたN-ミリストイル化タンパク質の疾患との関連について考察し、疾患バイオマーカーとして、あるいは疾患治療のための標的分子としての利用の可能性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、バイオインフォーマティクスの手法を用いた解析に重点を置いたため、コンピュータを使用する解析が多く、当初予定していた実験に要する設備備品費、消耗品費の使用額が少なく、次年度使用額が生じた。この経費は、24年度の請求額と合わせて、上記の研究推進方策に記述した研究項目[1], [2], [3] の解析のために使用する予定である。この際、設備備品費については、この備品の使用頻度が当初の予定より低いことから、より必要性の高い消耗品費に変更して使用する予定である。
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