研究課題/領域番号 |
23580136
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
内海 俊彦 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20168727)
|
キーワード | N-ミリストイル化 / タンパク質脂質修飾 / バイオマーカー探索 / 細胞情報伝達 / タンパク質翻訳後修飾 |
研究概要 |
これまでに確立した、cDNAリソースと無細胞タンパク質合成系を用いたN-ミリストイル化タンパク質の網羅的同定法を約6,300個のヒトcDNAクローン(KOP cDNAクローン)に適用して見出した37個の新規N-ミリストイル化タンパク質を対象とし、そのN-ミリストイル化の生理的機能について、特に疾患との関連が示唆されているタンパク質に注目して解析を行った。 その結果、がんの浸潤や転移との関連が示唆されているForminファミリーアクチン結合タンパク質に属するFMNL2およびFMNL3が、N-ミリストイル化依存的に顕著な細胞形態変化を誘導することを見出した。また、これらの作用はN-ミリストイル化に依存したアクチンフィラメントとの特異的相互作用に依存していることが示された。さらに、この細胞形態変化は、変異導入やN-ミリストイル化阻害剤の添加によるN-ミリストイル化の阻害により顕著に阻害し得ることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究で見出した新規N-ミリストイル化タンパク質についてその機能解析を行った結果、がんの浸潤や転移と関連することが報告されている2つのタンパク質がN-ミリストイル化されていることを見出し、さらにそれらのタンパク質に生ずるN-ミリストイル化ががんの浸潤や転移に関与すると考えられる細胞の特異的な形態変化に重要な役割を果たすことを明らかにしており、「新規のN-ミリストイル化された疾患関連タンパク質を同定する」という「研究の目的」が十分に達成されたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの本研究で見出した、FMNL2やFMNL3をはじめとする疾患や細胞情報伝達に関与すると推測される新規N-ミリストイル化タンパク質について、遺伝子導入細胞および各種のがん細胞株を用いて、以下の [1]~[3] の方法によりタンパク質機能発現におけるN-ミリストイル化の役割を明らかにし、がんを始めとする疾患との関連について解析するとともに、バイオマーカーとしての利用の可能性について検討する。 [1] 新規N-ミリストイル化タンパク質cDNAのヒト由来培養細胞への遺伝子導入に伴う細胞増殖、細胞形態変化、細胞死等の細胞の表現型の解析 [2] N-ミリストイル化を阻害したG2A変異体およびN-ミリストイル化阻害剤を用いたタンパク質機能発現におけるN-ミリストイル化の機能解明 [3] RT-PCR法による各種臓器由来がん細胞での発現レベルの解析と、RNAi法およびN-ミリストイル化阻害剤を用いたがん化とN-ミリストイル化の関連性の解析 これら [1]~[3] の解析により得られた実験結果を総合的に評価し、新たに見出されたN-ミリストイル化タンパク質の疾患との関連について考察し、疾患バイオマーカーとして、あるいは疾患治療のための標的分子としての利用の可能性について検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、23年度の本研究で見出した特定のタンパク質の機能解析に焦点を絞って研究を行ったため、網羅的な解析を想定していた当初の計画での予算使用額より実際に使用した金額が少なかったため次年度使用額が生じた。この経費は25年度予算額と合わせて、上記の研究項目[1]~[3]の実施に必要となる物品、主として細胞培養、遺伝子導入、RNAi関連の消耗品を中心に使用する予定である。
|