研究課題
本研究においては、生理機能の不明なオーファン硫酸転移酵素(SULT)の生理機能の解明と生体シグナルの変換・伝達への関与を中心に研究を実施している。標的としては、オーファンSULTと位置づけられているSULT4A1およびSULT7A1に絞り込み、基質分子の予測、培養細胞における機能解析などを中心に研究を実施している。平成24年度は、SULT4A1の機能解明に向けた新たな糸口を得るため、ゼブラフィッシュ胚を用いたホールマウントin situ ハイブリダイゼーション法による発生段階での遺伝子発現解析を行った。受精後30時間以降でSULT4A1の発現が確認された。発生に伴う発現箇所の変化は無く、一貫して脳および脊髄を中心とした神経系組織において発現していた。モルフォリノアンチセンスオリゴによるSULT4A1ノックダウン実験で、胚発生に影響を来すことと合わせて、SULT4A1は、ゼブラフィッシュの胚発生において、中枢神経系特異的に発現し、神経伝達物質の濃度調節等、脳神経系の機能に重要な働きをしていることが考えられた。SULT7A1に関しては、これまでの研究で生体内における情報伝達分子であるα,β-不飽和カルボニル基をもつ生理活性脂質プロスタグラジン類を特異的に硫酸化するユニークな機能を持つことを見出している。平成24年度は、α,β-不飽和カルボニル基を有する化合物群がヒトの硫酸転移酵素によって広く硫酸化されるのではないかと考え、ナフトキノンをモデル基質として、その硫酸化を検討した。その結果、13種類のヒト硫酸転移酵素のうち、hSULT1A1、1A2、1B1、1C4、1E1の5種類のSULTsがナフトキノンに対して硫酸化活性を示した。これらの結果より、α,β-不飽和カルボニル基を有する化合物が広くヒトSULTにより硫酸化される可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
生理機能の不明なオーファン硫酸転移酵素(SULT)の生理機能の解明が平成23年度結果より更に進展したため。
SULT4A1は、哺乳動物から魚類まで幅広い生物種で発現が確認されている。マウスSULT4A1の生理機能解明に関して、in vivo遺伝子機能阻害試験を行ったゼブラフィッシュをモデルとして、受精から10日までの期間における胎児期から稚魚期において行動学的な観点から解析を進める。また、ノックダウン個体のプロテオーム解析を実施し、タンパク質発現レベルでの影響から、SULT4A1の生理機能 解明につながる知見を見出す。マウスSULT7A1の機能解明に関しては、細胞レベルで解析するために、種々の培養細胞にてSULT7A1を強発現しその影響を検討する。 細胞としては、プロスタグランジン産生細胞やプロスタグランジンの標的となる細胞由来の細胞株を用いる。解析には、培養細胞にリポフェクション法で哺乳動物発現用ベクターにサブクローニングしたSULT7A1を導入し、硫酸フリーの培地でプレ培養後[35S]-放射活性硫酸でラベルし、培地中に放出された硫酸化された化合物の解析を行う。また、23および24年度の実験で調製されたプロスタグランジン硫酸体の生理機能解明に関しては、プロスタグランジンの標的細胞由来の細胞株に作用させ、その影響を蛍光ディファレンシャルに次元電気泳動を基盤にしたプロテオーム解析によりタンパク質を網羅的に解析することで検討する。種々のプロスタグランジンおよびその硫酸体、さらにその他の生体制御分子およびその硫酸体の影響を生体シグナルの変換・伝達に関連して同様に調べて比較解析する。
物品費 500,000円旅費 300,000円その他 100,000円
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 1件)
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