研究課題/領域番号 |
23580139
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
渡辺 光博 慶應義塾大学, 医学部, 特任准教授 (10450842)
|
研究分担者 |
森本 耕吉 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10468506)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 胆汁酸 / 代謝 / ACC / 発現解析 |
研究概要 |
本研究における平成23年度の研究実績について、申請書において当該年度の研究計画として記載した内容を概ね遂行した。尚、当初の研究計画では、平成23年度にはACC2遺伝子のプロモーター領域の同定とクローニング、多彩な条件下での多臓器におけるACC遺伝子発現パターンの検討、そしてルシフェラーゼアッセイを用いたACC2遺伝子の転写調節制御機構の解明を予定していた。ACC2遺伝子のプロモーター領域の同定とクローニング、ならびにルシフェラーゼアッセイについては、まず既に実施した5’-RACE法に基づいて決定された2つの異なる5’-非翻訳領域の上流に存在すると想定されるプロモーター領域に対して、各々特異的なプライマーを用いてクローニングし、当該領域の配列を決定した。クローニングされた転写調節領域についてはルシフェラーゼレポーターベクターに組み込みルシフェラーゼアッセイを試みた。ルシフェラーゼアッセイについては幹細胞系由来の2種類の細胞株を用いた検討を実施、転写調節領域には胆汁酸関連シグナルの標的となりうる複数のコンセンサス配列が存在するものの、今回の検討では有力なシグナル伝達系の候補を見出すことができなかった。多彩な条件下での多臓器におけるACC遺伝子発現パターンの検討については、野生型マウスに絶食あるいは絶食後再摂食の刺激を与え、脂質代謝・エネルギー代謝関連臓器あるいは組織におけるACC遺伝子発現について検討した。その結果、2つの異なるACC2遺伝子の発現パターンの一方は絶食時に、もう一方は再摂食時に発現上昇を認め、絶食・再摂食への応答が異なることが示された。ACC2遺伝子の複数の転写調節領域の存在意義解明につながる知見といえる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度に予定されていた研究計画ならびに実施された研究成果の概要は前項で記載したとおりである。当初の予定と成果を比較すると、ACC2遺伝子のプロモーター領域の同定とクローニングについては提出した研究計画に相当する達成度に至っているが、さらに続くルシフェラーゼアッセイについては、当初の予想に反しこれまでに用いた2種類の細胞株では有力なシグナル伝達系の候補を見出すことができなかった。ルシフェラーゼアッセイによるシグナル伝達系の解明は本研究において重要度の非常に高い検討内容であり、よりin vivoの遺伝子発現環境に近い培養細胞株を選択することでin vivoの検討で得られた結果と対をなすような結果が得られることが期待される。また、多彩な条件下での多臓器におけるACC遺伝子発現パターンの検討については、当初の計画どおりに実施され相応の知見が得られているが、当該遺伝子発現パターンのより明確な意義付けには不十分な水準にあると言わざるをえない。以上より、現在までの達成度は当初の研究計画よりやや遅れているものと判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、平成23年度の遅延回復と当初の研究計画を同時に遂行する予定である。当初の研究計画では、平成24年度は野生型および遺伝子改変動物の肝臓初代培養細胞を用いた検討、ならびにsiRNAを用いたACC2遺伝子発現抑制効果に関する検討を予定していた。前者については平成23年度の未達成項目であったルシフェラーゼアッセイにおいて、よりin vivoの遺伝子発現環境に近い条件を備える肝臓初代培養細胞を用いることにより、シグナル伝達系の候補を見出すことが可能になると期待される。また、後者についてはそれまでに確立されるであろう肝臓初代培養細胞を用いる実験系をそのまま活用することが可能であり実現可能性は非常に高いと予想される。また、後者の検討では既述した2つの異なる転写調節領域を有する各々の発現パターンを個別に抑制する方針であり、マウスACC2遺伝子のオルタナティブスプライシングの意義に関する興味深い知見が得られるものと考えられるが、その知見は平成23年度の未達成項目であったin vivoの多彩な条件下での多臓器におけるACC遺伝子発現パターンの検討において有力な手がかりとなりうる。これらのことから、平成24年度は当初の研究計画に加えて平成23年度研究計画の遅延回復は可能であると予想される。平成25年度は、当初の研究計画どおり、それまでの検討の結果見出されたシグナル伝達系をメタボリックシンドロームの治療標的として捉えた検討を予定している。具体的には、当該シグナル伝達系に作用する化合物をメタボリックシンドロームモデル動物ならびに胆汁酸シグナル伝達系関連遺伝子改変動物に投与した検討を予定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究の申請にあたり提出した研究費の使用計画では、平成24年度に使用予定の研究費としてルシフェラーゼアッセイ(200千円)、遺伝子発現解析(200千円)、遺伝子改変動物の飼育と解析(300千円)、実験動物用飼料の購入(200千円)、その他の試薬や消耗品(300千円)への支出が予定されていた。これらについては、おおむね当初の予定どおり使用する計画である。
|