研究課題/領域番号 |
23580140
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
千葉櫻 拓 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (30227334)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | サイクリンA / サイクリン依存性キナーゼ / Mcm7 / Mps1 / S期移行 / 中心体複製 / 染色体倍数化 |
研究概要 |
(サイクリンA(CycA)-CDK複合体の活性亢進が、S期移行促進・中心体過剰複製・染色体倍数化を介して、染色体恒常性を破綻させる分子機構の解明を目的として、以下の解析を行った。(1)CycA-Mcm7相互作用がS期移行を促進させる分子機構の解析:野生型CycAとMcm7結合能・S期促進機能欠損変異体(CycA-C1)の表現型を明確に解析するため、CycA欠損マウス繊維芽細胞株に野生型およびC1変異型CycAの誘導発現系を用いた安定導入を行った(現在選択中)。また、CycAの染色体複製開始領域への結合動態についてゲノムワイドなChIP-Seq解析を行うため、複製領域結合タンパク質Orc2の抗体を用いてChIP条件の検討を行い、クロマチン調製・免疫沈降の条件を確立した。(2)CycA-CDKの活性亢進による中心体過剰複製・染色体倍数化の分子機構の解析:CycAによる中心体複製制御に関与すると報告されているMps1, Orc1, Mcm5が、染色体倍数化に関与しているかどうかについて、まずMps1の特異的阻害剤を用いて検証した結果、Mps1の阻害によりCycA-CDKの活性亢進に依存せずに染色体倍数化が誘導されることが示された。一方、ヒトがん細胞株での解析より、Mps1の活性化により中心体過剰複製およびCDK1活性の亢進が誘導され、細胞周期がG2/M期で停滞することが示唆された。(3)CycA-CDKの活性亢進によるS期移行促進と中心体過剰複製との関連性の検証:CycAのS期促進機能が中心体複製・染色体倍数化へ関与するかどうかを検証するため、野生型CycAおよびCycA-C1変異体をCKI三重欠損変異細胞で発現させて細胞周期解析を行った結果、どちらの場合も染色体倍数化を誘導することが示され、CycA-Mcm7相互作用は倍数化に関与しないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)当研究で出発材料として用いるCycA欠損マウス繊維芽細胞株は、染色体上のCycA遺伝子領域に組換え酵素Creが認識するloxP配列を組み込んだ細胞株に、Cre発現ウイルスを一過的に感染させることで得られるものである。当該細胞株とウイルスはP. Sicinski博士より分与されていたが、当初細胞株の染色体倍数性とウイルスの調製・感染過程に問題があり、内在性CycAの発現が検出されないレベルのCycA欠損細胞株を得るのに多大な時間を費やした。(2)中心体複製制御に関与すると報告されているMps1, Orc1, Mcm5の中心体局在性について、それぞれの抗体を用いて免疫染色法により解析したが、いずれも明確な局在性が示されず、抗体の適性や染色条件について試行錯誤している状況である。また、それらの因子のsiRNAによるノックダウン解析については、それぞれのノックダウン効率に差があり、siRNAの設計も含めて条件検討中である。さらに、種々の部位特異的変異を導入した変異型CycAをCKI三重欠損変異細胞で発現させ、染色体倍数化誘導能を欠損する変異体の分離を試みているが、CKI三重欠損変異細胞へのトランスフェクションが難航しており、染色体倍数化誘導能を欠損する変異体はまだ得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ようやく内在性CycA欠損・外来性CycA誘導発現細胞株を樹立しつつあるので、樹立出来次第、G1期に同調後リリースとともに野生型およびC1変異型CycAを誘導発現させ、経時的にクロマチン結合画分を分離し、複製ライセンス化因子・複製開始因子・複製フォーク因子等のクロマチンローディングに対する野生型および変異型CycAの影響を解析する。また、ChIP-Seq解析の条件を確立し、G1/S遷移期の細胞よりCycA抗体、Mcm7抗体、およびOrc2抗体を用いたChIP-Seq解析を行い、CycA、Mcm7と複製開始領域との結合動態について検証する。さらに、野生型およびC1変異型CycAを含む複合体のプロテオーム解析に向けて、抗CycA免疫沈降およびMS解析の条件検討に着手する。(2)Mps1, Orc1, Mcm5のノックダウン条件を確立次第、それらの中心体過剰複製・染色体倍数化に対する影響を解析する。Mps1については、阻害剤を用いた解析により染色体倍数化を負に制御することが示唆されたが、中心体複製に対する効果を検証する。また、上記3因子の局在性についても引き続き検証する。さらに、染色体倍数化誘導能を欠損するCycA変異体の探索を続行する。(3)CycAによるS期促進と中心体複製・染色体倍数化との相関性をさらに検証するため、前記(2)において染色体倍数化を誘導しないCycA変異体が分離されたなら、その変異体がS期移行促進を誘導するかどうかについて解析する。また、Mps1, Orc1, Mcm5のノックダウンがCycAによるS期移行促進に及ぼす影響について検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費(1200千円):必要品目(カッコ内は単価、単位千円)・積算根拠は以下の通りである。<培養試薬・器具>年間25L必要であるので、Gibco社 DME液体培地(1.4)×50+ウシ胎仔血清(40)×5=270、培養用100mmディッシュ(13)×10=130、計400千円。<RNAi受託>北海道システムサイエンス社に受託。1因子当たりカスタムsiRNA(クラスZ)150×3因子(Mps1, Orc1, Mcm5)で計450+control dsRNA(50)=500千円。<汎用試薬>BrdU, FACS用試薬等(250)+汎用試薬類(50)=300千円。旅費(300千円):国内学会参加2回、国外学会参加1回を計画しているため、国内旅費として宿泊費(10)×7+交通費(40)×2=150、国外旅費として航空料金(100)+宿泊費(10)×5=150、計300千円。
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