研究課題
ATF5欠損マウスの高次神経機能を検討し、記憶行動試験としてBarnes Maze試験、Cue and Contextual Fear Conditioning試験、および、Eigt-Arm Radial Maze試験を実施して、作業記憶、参照記憶、文脈記憶を検討したが、統計的に有意な差は認められなかった。記憶形成は中枢神経回路の再編成と捉えることが可能である。そこで、高次神経回路形成のモデルとして有効で、嗅覚神経の一次中枢である嗅球に焦点を当て、解析を進めた。ATF5KOの嗅球の層構造の形態を詳細に観察した。その結果、胎仔期、新生仔期、成熟期の嗅球の層構造に大きな崩れは見られなかった。しかし、嗅球の表層に存在し、嗅上皮から嗅神経の軸索が投射される嗅神経層が薄く、また投射せず停留している軸索も観察された。また、成熟期ATF5KOの糸球体の形成に異常がみられる部位もあり、嗅上皮からの神経伝達ができない部位が多く存在すると考えられた。ATF5KOの嗅球が小さい原因として細胞増殖の低下が関与しているか調べるために、妊娠14.5日目の雌マウスに5-bromo-2-deoxyuridine(BrdU)を投与し、胎児の脳室帯および嗅球におけるBrdU陽性細胞数の比較を行なった。その結果、ATF5KOの脳室帯および嗅球でBrdU陽性細胞の数が有意に減少し、介在ニューロンが産出されるE14.5において細胞増殖が低下していることがわかった。以上の結果から、ATF5が嗅球介在ニューロンの細胞増殖を制御し、嗅覚系の投射および介在ニューロンの神経接続の回路形成に機能を持ち、嗅覚神経回路の形成に必須な遺伝子であることがわかった。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 289 ページ: 3888-3900
10.1074
FEBS J
巻: 280 ページ: 4693-4707
10.1111