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2012 年度 実施状況報告書

イネの新規耐病性遺伝子BSR1による広範な病害抵抗性機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 23580142
研究機関独立行政法人農業生物資源研究所

研究代表者

森 昌樹  独立行政法人農業生物資源研究所, 耐病性作物研究開発ユニット, 上級研究員 (50192779)

キーワードイネ / 病害抵抗性 / 植物免疫 / シグナル伝達
研究概要

BSR1とWRKY45やサリチル酸経路との上下関係を調べるために、前年度BSR1過剰発現イネと、サリチル酸含量の低下したnahGイネを交配し交配種子を得ている。交配種子を用いて、SA下流の主要な転写因子遺伝子WRKY45とOsNPR1の発現を調べた結果、両遺伝子共にWTに比べBSR1-OXでは発現が上昇し、BSR1-OX/NahG 植物ではNahGと同程度まで発現が低下していたので、BSR1-OXにおける両遺伝子の高発現は内在性SAに依存していることが示された。いもち病抵抗性検定を行ったところ、BSR1-OX/NahGではBSR1-OXよりやや弱いものの、WTに比べ有意に強い抵抗性を示した。よって、BSR1-OXにおける抵抗性の増大に内在SA経路はあまり寄与してなく、むしろそれ以外の経路が主に関与することが示唆された。
前年度作製したBSR1ノックダウンイネについて病害抵抗性検定を行ったところ、いもち病、白葉枯病に対する抵抗性がWTより弱まっていたので、BSR1がいもち病、白葉枯病に対するイネの本来の抵抗性に寄与していることが示された。また前年度得たTOS17によるBSR1ノックアウトイネについて、ホモ系統の種子を採種した。WRKY45の発現レベルはノックダウン及びノックアウト系統において減少していた。
前年度マイクロアレイにより同定したBSR1の下流候補遺伝子のいくつかについて、高発現イネを作製した。また前年度相互作用因子探索用に作製したBSR1-HPB(HA-PreScissioin site-Biotinyl domain)イネについて目的の融合タンパク質を高発現していることを確認し、稔性が低いながらも種子を採種したが、発現が最高レベルのものは不稔であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度にBSR1遺伝子の下流の多くの遺伝子がSA系の抵抗性関連遺伝子と重なることが示されていたが、2年目はNahGイネとの交配を通してBSR1-OXにおける抵抗性の増大に内在SA経路はあまり寄与してなく、むしろそれ以外の経路が主に関与することを示唆するデータを得ることができた。また機能欠損型変異体の解析を通して、BSR1はイネ本来の病害抵抗性機構に重要であること、またWRKY45の上流に存在することを示すことができた。BSR1-HPBイネは予想外に稔性が極めて低かったため、今後の研究に用いるための種子を1年かけて確保した。

今後の研究の推進方策

・BSR1-OXイネにおいて、病害抵抗性への関与が知られている植物ホルモンの内在レベルが変動しているかどうかについての情報を得るために、SA等のレベルを定量しWTと比較する。
・BSR1ノックアウトイネの罹病性を調べるために、病害抵抗性検定を行う。前年度作製した下流候補遺伝子を高発現するイネについても病害抵抗性を検定する。ノックアウト、ノックダウンイネを用いてBSR1の下流遺伝子をさらに同定し、引続き高発現イネの作製を行う。
・BSR1の高発現がいもち病、白葉枯病以外の病気に対しても抵抗性を付与できるかどうか調べる。
・BSR1-HPB高発現イネが病害抵抗性を示すかどうか確認し、確認後BSR1と相互作用するタンパク質を探索し、同定を試みる。
・結果のとりまとめを行う。

次年度の研究費の使用計画

下流遺伝子の発現解析、高発現イネの作製等を行うために、引き続き非常勤職員を雇用する。物品費は研究上必要な消耗品を中心に使用予定である。繰越し分は主に、北京で開催される植物病理国際会議においてBSR1遺伝子についてのConcurrent sessionで講演を行うための出張費が必要になったので、それに充てる予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] 広範な植物病原菌に対する抵抗性遺伝子 イネからBSR1遺伝子をFOXハンティングにより発見2012

    • 著者名/発表者名
      前田哲, 森昌樹
    • 雑誌名

      化学と生物

      巻: 50 ページ: 627-628

    • 査読あり
  • [学会発表] FOXハンティングで単離した広範な病害抵抗性遺伝子BSR1の耐病性機構解析と実用化の試み2013

    • 著者名/発表者名
      前田哲, 菅野正治, 後藤新悟, 姜昌杰, 高辻博志, 森昌樹
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      20130324-20130327
  • [学会発表] イネの複合病害抵抗性遺伝子BSR1による抵抗性にはサリチル酸非依存性の経路が主に関与する2013

    • 著者名/発表者名
      前田哲, 菅野正治, 中込マリコ, 宮尾安藝雄, 姜昌杰, 西澤洋子, 高辻博志, 森昌樹
    • 学会等名
      第54回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] イネのジテルペン型ファイトアレキシン生合成を正に制御する新規転写因子DPF2013

    • 著者名/発表者名
      水谷恵美, 福島説子, 中川仁, 田中惇訓, 岡田憲典, 前田哲, 松下茜, 鎌倉高志, 山根久和, 高辻博志, 森昌樹
    • 学会等名
      第54回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] イネの転写因子DPFはサリチル酸経路においてWRKY45およびWRKY62の下流でジテルペン型ファイトアレキシン合成酵素遺伝子を制御する2013

    • 著者名/発表者名
      福島説子, 赤城文, 森昌樹, 菅野正治, 中山明, 高辻博志
    • 学会等名
      第54回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] イネ病害抵抗性を誘導する新規アシルポリアミン誘導体2013

    • 著者名/発表者名
      岩川純也, 彦坂政志, 中村英光, 前田哲, 森昌樹, 浅見忠男
    • 学会等名
      日本農薬学会第38回大会
    • 発表場所
      筑波大学
    • 年月日
      20130314-20130316
  • [学会発表] イネの複合病害抵抗性遺伝子BSR1とサリチル酸シグナルとの関連解析2012

    • 著者名/発表者名
      前田哲, 菅野正治, 中込マリコ, 宮尾安藝雄, 姜昌杰, 高辻博志, 森昌樹
    • 学会等名
      日本育種学会第122回講演会
    • 発表場所
      京都産業大学
    • 年月日
      20120914-20120915
  • [学会発表] Broad-spectrum disease resistance by BSR1 shares transcriptional components with BTH-inducible resistance in rice2012

    • 著者名/発表者名
      Maeda S, Sugano S, Nakagome M, Miyao A, Jiang C-J, Takatsuji H, Mori M
    • 学会等名
      XV International Congress on Molecular Plant-Microbe Interactions
    • 発表場所
      京都国際会議場
    • 年月日
      20120729-20120802
  • [産業財産権] リゾクトニア菌抵抗性遺伝子2013

    • 発明者名
      森 昌樹 前田 哲、横谷尚起、小田賢司、近藤陽一、松井南
    • 権利者名
      森 昌樹 前田 哲、横谷尚起、小田賢司、近藤陽一、松井南
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2013-020066
    • 出願年月日
      2013-02-05

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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