研究課題
イネの病害抵抗性遺伝子BSR1は、高発現することで広範囲の病原菌に対する抵抗性を付与することができるリン酸化酵素遺伝子である。本研究ではBSR1による抵抗性機構の解析と、抵抗性がどこまで広範囲であるかの検証を行った。まず、BSR1の下流遺伝子を探索するためにマイクロアレイ解析を行い、BSR1高発現イネではBTH(サリチル酸アナログ)誘導性遺伝子の4割以上が発現増大していることを示した。BSR1による抵抗性にサリチル酸(SA)シグナルが関与している可能性が考えられたので、SA含量の低下したnahGイネ、SA下流のキー遺伝子WRKY45をノックダウン(KD)したイネ、及びSA下流のキー遺伝子OsNPR1をKDしたイネとBSR1高発現イネをそれぞれ交配し、白葉枯病及びいもち病に対する抵抗性を評価した。その結果、BSR1による病害抵抗性には、SA, SA下流のWRKY45及びOsNPR1はほとんど関与していないことが明らかになった。つぎにBSR1の本来の役割を明らかにするために、BSR1-KDイネを作製し病害抵抗性検定を行ったところ、いもち病、白葉枯病に対する抵抗性がWTより弱まっていた。よってBSR1が、イネの本来有する病害抵抗性にも寄与していることが示された。さらに完全にBSR1の機能を喪失した系統を得るために、TOS17ミュータントパネルのPCRスクリーニングを実施し、BSR1のエキソンにTOS17が挿入しているノックアウト系統を得ることができた。さらに、BSR1高発現による病害抵抗性が、どこまで広範囲であるかについて検証した。イネでは白葉枯病、いもち病に加え、さらに2種類の病気に対しても抵抗性を付与できることが示された。また、双子葉作物のトマトにおいても、斑葉細菌病等に抵抗性になることが示された。
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The International Journal of Developmental Biology
巻: 57(6/7/8) ページ: 517-523
10.1387/ijdb.130176mm