研究課題/領域番号 |
23580144
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 優志 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特任助教 (30342801)
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キーワード | オーキシン / シロイヌナズナ / 遺伝子発現 / 生合成 / 代謝中間体 / TAA / YUCCA |
研究概要 |
オーキシン生合成にはさまざまな経路が提唱され、多くの中間体が関わっているとされてきた。しかし、昨年度にシロイヌナズナではインドールピルビン酸(IPyA)を中間体とするIPyA経路が主要なオーキシン生合成経路であることが報告された。IPyA経路を担う酵素はTAAファミリーとYUCファミリーである。 前年度までにTAA阻害剤であるAOPP処理によるYUCファミリーの遺伝子発現がフィードバック制御を受けることを明らかにした。今年度はAOPP以外の複数のオーキシン生合成酵素阻害剤でオーキシン生合成関連遺伝子の発現解析を行い、KynurenineというTAA阻害剤でもYUCファミリーの遺伝子発現がフィードバック制御を受けることを明らかにした。さらに、これらの現象は当研究室で開発中のAOPPやKynurenineとは標的酵素の異なる新たなオーキシン生合成阻害剤でも同様の結果が得られることを確認した。 また、合成オーキシン(NAAや2,4-D)の投与により、TAAやYUCファミリーの遺伝子発現が減少することを見出し、フィードバック制御は活性化と不活性化の両方向に機能することを見出した。 さらに、Kynureninを3時間処理した植物にインドールピルビン酸(YUC酵素の基質)を投与することで、インドールピルビン酸単独投与の植物に比べて高いインドール酢酸の蓄積が見られた。このことは、フィードバックによるYUC活性化を代謝レベルで確認することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オーキシン過剰時(合成オーキシン投与時)にはYUCファミリーの遺伝子発現が下がり、オーキシン欠乏時(阻害剤投与時)にはYUCファミリーの遺伝子発現が上がることから、1)オーキシン生合成はフィードバック制御を受けること、2)このフィードバック制御は活性化・不活性化の両方向に機能していることを明らかに出来た。さらに、遺伝子発現だけではなく、IPyA経路の中間体であるIPyA投与により代謝レベルでの調節機構を明らかにすることが出来た。YUCはオーキシン生合成の律速段階であり、このステップが代謝レベル・遺伝子発現レベルでフィードバック調節を受けることは、オーキシンホメオスタシスにとって重要であることを明らかに出来た。 一方、中間体プロファイルについては、オーキシンの主要生合成経路がIPyA経路であることが明らかになったので、他経路の中間体を解析する重要性が下がったため、優先順位を下げて解析を延期している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までにシロイヌナズナのオーキシン生合成において、YUCの遺伝子発現・代謝活性が活性化・不活性化両方向にフィードバックによって制御されていることを見出した。計画最終年度ではこれを論文として纏めるとともに、シロイヌナズナ以外の植物におけるオーキシン生合成調節機構についても探索していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画最終年度では、1)遺伝子発現解析のための分子生物学実験用試薬・キット等に50万円、2)オーキシンおよび中間体分析におけるLC-MS運転に関わる分析消耗品および関連試薬に50万円を、3)培地作りや植物の播種・管理担当の実験補助員雇用費用に65万円を、4)その他一般プラスチック消耗品および植物栽培関連製品として20万円を、5)論文原稿英文校閲および投稿料に15万円を計上する。
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