研究課題/領域番号 |
23580146
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
夏目 雅裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10201683)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 青枯病菌 / 走化性 / 根浸出液 |
研究概要 |
今年度はまず、トマト根滲出物の走化性誘引活性の確認を行った。ファイトトロンで2週間トマトを生育させ、得られた根浸出液を酢酸エチルで抽出し、抽出残液を活性炭カラムに通して、酢酸エチル抽出画分と活性炭吸着画分を得た。得られた抽出物をバイオアッセイに供した結果、予備実験では見られていた酢酸エチル抽出物の活性は確認できなかったが、活性炭吸着画分には活性を確認した。 これまで被検菌は圃場から分離した菌株を用いていた。走化性は菌株により異なると考えられることから、より明確に・低濃度で走化性を示す菌株を選抜することを目的として、農業生物資源ジーンバンクから性状の異なる青枯病菌8菌株を譲り受け、グルタミンに対する走化性を調べた。その結果、菌株によって移動の指向性や感度、移動後の菌の見やすさに多様性があることが明らかになった。なお、Biover や分離源、保存期間との間に関連は認められなかった。次に3菌株を選抜してトマト根浸出液に対する走化性を調べた結果、1菌株が明瞭な走化性を示すことを見いだし、今後は本菌株を被検菌として用いることとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最大の理由は、予備実験では認められた酢酸エチル抽出物に活性が認められなかったことである。本研究ではアミノ酸や糖、有機酸など栄養源となりうる既知の走化性誘引物質以外の比較的極性の低い活性物質を探索することが目的である。予備実験では酢酸エチル抽出画分が活性を示したことから本申請に踏み切ったのであるが、この画分に活性の再現性が認められなかったことは予想外であった。バイオアッセイを繰り返したり、トマトの栽培条件や青枯病菌の状態、試薬等を一つ一つチェックしたが、特に問題点は見つからず、最も重要と考えた被検菌の選抜から検討せざるを得ず、活性物質の精製に関しては進展がなかったため、「やや遅れている」との評価にした。 青枯病8菌株のグルタミン酸に対する応答は予想以上に多様性が見られ、興味深い結果が得られたと評価した。従来の走化性試験に関する論文では、特定の菌株を用いて実験した結果についての記述しかなく、複数の菌株で応答の違いを明らかにしたのは本研究が初めてであると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究で被検菌の選抜を行って、適当な菌株が得られたことから、来年度は抽出材料の選抜と誘引物質生産条件の確立を柱に研究を進める。 抽出材料はこれまで用いてきたトマトの品種桃太郎に加えて、青枯病耐性品種や昔の栽培種、ミニトマト等性質の異なる品種の根浸出液を集めて、その誘引活性を調べる。その中から誘引物質生産能の高い品種を選抜して、大量栽培し、誘引物質の精製を進める。 我々は放線菌の胞子に含まれる自己胞子発芽抑制物質に関する研究において、培養物全体ではなく胞子のみを集めて活性物質を探索した結果、不純物の少ない粗抽出物を得ることができ、結果的に精製工程を短縮して活性物質の単離を効率よく進められた経験から、トマトの栽培条件と浸出液の回収時期が今後の研究の進展に大きく影響すると考えており、来年度はこの点に集中して研究を展開したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画からの変更はなく、主にトマト種子や精製基剤の購入に充てる予定である。
|