研究課題/領域番号 |
23580148
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮下 正弘 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80324664)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 植物 / 防御応答 / 細胞透過性ペプチド / エフェクター / ランダムライブラリ |
研究概要 |
植物は細胞外および細胞内で病原体の感染を認識して防御応答を開始する。したがって、防御反応を引き起こす物質は、人為的に植物の防御能力を高める「植物免疫活性化剤」として用いることが可能である。植物による病原菌の認識は多くの場合、細胞膜上の受容体を介して行われる。それに加えて植物細胞質においても、病原体の注入するタンパク質(エフェクター)が植物によって認識され、防御応答を開始するが、その分子機構の解明は進んでいない。これはタンパク質を細胞内へ導入する実験手法に様々な制約があるためである。近年、細胞透過性ペプチドを用いたタンパク質の細胞内への直接導入法が様々な分野で注目されている。このペプチドは5-10残基程度の連続するアルギニン残基で構成され、これをタンパク質の末端に付加すると顕著な細胞透過性を付与することができる。そこで、本研究では細胞質における病原体認識機構の解明を目的として、細胞透過性ペプチドを用いたエフェクターの細胞質導入法の検討、ならびに細胞透過性ペプチドを付加したランダムペプチドライブラリの作製を行った。まず、エフェクターとして防御応答を誘導することが知られているAvrPtoを用い、大腸菌を用いた発現系によるAvrPtoへのオリゴアルギニン配列の導入を行い、大量調製を試みた。その結果、可溶化剤としてアルギニンを用いることにより、菌体から効率良く発現タンパク質を抽出・精製することができ、実験に必要な量を確保できることが明らかとなった。また、オリゴアルギニン配列をペプチドN末端に導入したランダムペプチドライブラリの作製を試みたところ、オリゴアルギニン配列の存在により配列解析が困難であることが判明した。そこで、ランダムペプチド部分とオリゴアルギニンとの間に、還元反応により簡便に切断できる構造を導入することにより、活性判定後の構造決定が容易に行えることが明らかとなった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書時においては、細胞透過性ペプチドをもつエフェクターを調製後、活性評価まで行う予定であった。しかしながら、試料の大量調製の際に不溶化が起こってしまい、その解決に時間を要したため、活性評価にまでは至らなかった。また、オリゴアルギニン配列をペプチドN末端に導入したランダムペプチドライブラリについても、スクリーニングに供する予定であったが、配列決定時の不都合が判明し、オリゴアルギニン部分を除去する工夫の開発に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、調製したエフェクターの活性評価ならびにランダムペプチドライブラリのスクリーニングを進める。エフェクターに関しては、オリゴアルギニン配列の導入位置についての検討や、異なるエフェクタータンパク質を用いた実験なども検討する。また、ペプチドライブラリのスクリーニングについては、さらなる効率化や確実性を考慮し、スクリーニングの改良を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述した通り、エフェクターの活性評価ならびにペプチドライブラリのスクリーニングを次年度に行うことにしたため、次年度へ繰り越される研究費が生じた。これと翌年度の研究費を合わせ、これらの実験を進めていく予定である。
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