研究概要 |
本研究では、strigol(SG)を高生産するコウモリカズラ培養根を用いてストリゴラクトン(SL)生合成を解明することを目的とした。昨年度までの結果から、コウモリカズラでは5-deoxystrigol(5DS)はSGの直接の前駆体ではないこと、つまり、SGはSL生合成中間体であるcarlactone(CL)から5DSを経由せず生合成されることが示唆された。そこで、本年度は(1)SL生合成酵素であるD27, CCD7, CCD8の組換え酵素を用いてCLの酵素合成を試みた。(2)コウモリカズラ培養根にSLアナログであるGR24を投与して代謝実験を行った。(3)sorgomolを高生産するソルガムを用いて5DSの代謝実験を行った。 (1)D27, CCD7, CCD8の組換え酵素を大腸菌発現系により作成し、各酵素の酵素活性を確認した。βカロテン生産大腸菌に3種酵素を導入したがCL生成を確認できなかった。藻類ドナリエラから9-cis-b-caroteneを抽出精製し、CCD7とCCD8によりin vitro系でCLの酵素合成に成功した。 (2)コウモリカズラ培養根にGR24を投与しLCMSにより代謝物を分析した結果、GR24水酸化物と推定される代謝物を検出した。水酸化GR24標品を有機合成し代謝物との比較解析を行った結果、GR24代謝物は7-OH-GR24であると同定した。 (3)ソルガムに重水素標識5DSを投与し根浸出液中のSLをLCMS分析した結果、sorgomolに有意に5DSが取り込まれることを確認した。つまり、ソルガムではsorgomolは5DS経由で生合成されることが強く示唆された。次に、ソルガム根からミクロソームを調製し5DSからsorgomolへのin vitro変換試験を行った結果、5DSの水酸化にはシトクロムP450の関与が示唆された。
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