研究課題/領域番号 |
23580150
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
河野 強 鳥取大学, 農学部, 教授 (50270567)
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研究分担者 |
岩崎 崇 鳥取大学, 農学部, 助教 (30585584)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 休眠 / 寿命 / インスリン様分子 / 線虫 |
研究概要 |
本年度は個体レベルでの解析に注力した。すなわち、ins-17, ins-18, ins-35遺伝子を発現するプラスミド、ならびに、それぞれのレポーター遺伝子を作出した。次いで、個々の遺伝子破壊線虫ならびに野生株に顕微注入し、遺伝子組換え線虫を作出後、表現型の解析(遺伝子機能解析)ならびに時空間的発現パターンの解析を行った。 ins-17, ins-18を発現するプラスミドは個々の遺伝子破壊線虫の表現型(休眠率低下)を回復させ、また、過剰発現体は遺伝子破壊線虫とは逆の表現型(休眠率上昇)を示した。このことはINS-17ならびにINS-18が受容体DAF-2のアンタゴニストとして機能し、DAF-2シグナルを遮断することにより幼虫休眠を促進することを強く示唆する。また、ins-18過剰発現株では成虫寿命が著しく延長したことから、INS-18は寿命制御においてもDAF-2アンタゴニストとして機能することが示唆された。 また、ins-35を発現するプラスミドは対応する遺伝子破壊線虫の表現型(休眠率の著しい上昇)をキャンセルし、また、過剰発現体は遺伝子破壊線虫とは逆の表現型(休眠率低下)を示した。このことから、INS-35が受容体DAF-2のアゴニストとして機能し、DAF-2シグナルを亢進することにより幼虫休眠を抑制することが強く示唆された。 ins-17, ins-18は同じく幼虫休眠を促進するが、INS-17::GFP, INS-18RFPの発現パターンの解析から、両ペプチドは異なる神経細胞で産生され、休眠時にその発現量が著しく上昇することが判明した。この発現パターンは両者が強調して幼虫休眠を促進することとよく一致する。さらに、発現制御機構の解析から、両遺伝子はインスリン様シグナルの下流に位置する転写因子DAF-16により転写が促進されることなどを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の計画取りに、ins-17, ins-18, ins-35遺伝子の生理機能を明確にすることができた。また、時空間的発現パターンの解析により、その生理機能解析の結果を正当化することができた。 また、初代培養細胞の調製に成功していることから、平成24年度の研究計画を滞りなく遂行できる準備が整っている。 以上の理由により、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度では個々のインスリン様遺伝子の生理機能を明確化することができた。これはあくまで個体レベルでの検証であり、分子・細胞レベルでの検証が必要である。 そこで、平成24年度では、線虫の初代培養細胞系を用いた個々のインスリン様分子の機能(アゴニストかアンタゴニストか)を明確にする。そのために、生化学的手法を用いることにする。 すなわち、個々のインスリンを遺伝子工学的手法により調整し、線虫の初代培養細胞(下流の転写因子にタグを付加したDAF-16::GFPを構成的に発現する)に添加する。DAF-16::GFPの挙動(核・細胞質間の移動)を指標として、アゴニストかアンタゴニストかを決定づけることにする。 さらに、コンピューターモデリングにより受容体DAF-2の高次構造を予想し、インスリン様分子が結合する際の構造変化をシミュレーションすることにより、分子レベルでアゴニストかアンタゴニストかを決定づけることにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述した研究推進方策に基づいて、初代培養細胞を用いたインスリン様分子の評価に対する研究費の使用を考えている。平成24年度に計画している研究を遂行するために、下記の経費を必要とする。 経費の殆どを細胞培養経費ならびにインスリン様分子調製にかかる経費として使用する。従って、備品購入計画はない。 また、6月末に予定されている第5回東アジアC. elegans集会参加・発表に必要な経費の支出を考えている。
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