本年度は、まず、線虫のインスリン様がどのような機構で休眠制御のみに関与、あるいは、休眠ならびに寿命制御に関与するかを検証した。 RNAiスクリーニングを行った結果、休眠を制御するINS-23を見出した。遺伝子破壊・レスキュー・過剰発現により、本ペプチドは休眠を促進することを明らかにした。一方、同様にして寿命制御への関与を検証したところ、本ペプチドは寿命制御には関与しないことが判明した。報告者が既に解析は進めているINS-18は休眠制御のみならず寿命制御にも関与する。そこで、両者の機能の相違が何に由来するのかを明らかにした。休眠制御に関しては、両者は相補的であり、かつ、相加的に機能することが判明した。一方、寿命制御に関しては、両者に相補性ならびに相加性は認められなかった。そこで、ペプチドの構造あるいは時空間的発現パターンの違いが機能の相違に起因する可能性を検証した。両遺伝子の発現パターンをレポータータンパクを用いて比較したところ、明確な違いが認められた。そこで、遺伝子調節領域のみを入れ換えたスワップ遺伝子を作成し、機能解析を行った。その結果、ペプチドの構造ではなく、時空間的発現パターンにより休眠制御・寿命制御が決定されることが明らかとなった。 また、先年度にINS-35が通常生育の場合に腸から体腔に分泌され、休眠時には腸管側に分泌方向を変え、最終的に腸管で分解されることを示したが、同様の挙動を示すインスリン様ペプチドを探索した。その結果、INS-7が同様の産生・分泌パターンを示すことが明らかとなり、INS-35と協調して休眠を制御していることを明らかにした。
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