加圧熱水による反応場条件(温度:~200℃,圧力:~7 MPa)を耐圧容器と有機合成装置によって設定し,生物資源(バイオマス)の変換技術として応用することができるデンプン・多糖類ナノ分散系調製のための加工基盤技術(ナノ粒子調製リアクタ)の開発を進めた。ナノ粒子分散系の粒子径制御についての基礎的知見を得るために,加圧熱水反応場のイオン積とデンプンナノ粒子の平均粒子径との関係を調べた。分散液中の大粒子を遠心力によって取り除きより小さなデンプンナノ粒子の精製を行った。応用例として,ナノ粒子調製リアクタを用いてイヌリンの亜臨界水処理を行い,得られたイヌリン加水分解物について,質量分析を行った。 ナノスケール微細化:ナノ粒子調製リアクタを用い,濃度5水準,初期圧力3水準,到達温度3水準の調製条件にて微細化を進めた。さらに,Marchall-Franckの式を用いてリアクタ温度と圧力からイオン積を求めた。遠心分離によるデンプンナノ粒子の生成:デンプン濃度2水準とし,回転数を15000 rpm,20000 rpm,25000 rpm,30000 rpmの4水準で操作,それぞれの条件での遠心分離の後,上澄みを採取し,粒子径と粒子径分布,ζポテンシャルの測定を行った。イヌリン加水分解物の質量分析:亜臨界水処理によって得られたイヌリン加水分解物の質量分析を行った。 ナノ粒子調製リアクタ操作範囲の温度・圧力の制御により,目的とするナノ微細化粒子の平均粒子径を調製できることが示唆された。ナノ粒子分散系の平均粒子径の最小値は,73.9 nm(動的光散乱法 キュムラント解析モード)であった。亜臨界処理水中のイヌリン加水分解物の質量分析を行った結果,DFAIII(ジフルクトース無水物III)を含むDFAsが構成成分として存在する知見を得た。
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