研究課題/領域番号 |
23580160
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
崎山 高明 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (70170628)
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キーワード | 食品タンパク質 / 熱凝集 / 付着 / 連続加熱装置 / ホエイ / β-ラクトグロブリン / 卵白 / オボアルブミン |
研究概要 |
ホエイと卵白の連続加熱工程におけるタンパク質の機器表面への付着機構を解明することを目的として、加熱時の凝集特性とステンレス鋼表面への付着特性の解析を行なった。 平成23年度の研究の結果、ホエイタンパク質の主要成分であるβ-ラクトグロブリン(β-Lg)を70℃以上の温度で予め加熱するとステンレス鋼表面に付着し難くなることが明らかになっている。本年度は共存タンパク質の影響を調べるため、第二成分であるα-ラクトアルブミン(α-La)とβ-Lgとの混合系について、予め加熱した試料を調製し、試料中の凝集体生成状況を調べるとともに、ステンレス鋼表面に対する付着特性の解析を行なった。α-La/β-Lg混合試料を75℃以上で予備加熱すると、遊離SH基を持たないα-Laの凝集体形成に対する寄与率が大きくなること、75℃におけるタンパク質付着量が減少することが示された。さらに、凝集体が未形成の試料から付着するのはほとんどがβ-Lgであるのに対し、予め凝集体が形成された試料ではα-Laの付着に寄与する割合が高くなることが示された。以上、凝集体の付着挙動をモデル化するうえで、有用な情報を得ることができた。 ホエイタンパク質濃縮物(WPC)溶液とホエイ溶液についても上記と同様の検討を行った。同じ固形分濃度で比較すると、タンパク質含量の多いWPC溶液の方が凝集体形成が速いことが示された。平成23年度の連続加熱実験でWPC溶液の方がホエイ溶液よりも付着量の少ないことが明らかになっており、併せて考察すると、高温下での付着と液中での凝集体形成とは競合しており、液中での凝集体の形成が起こりやすい条件では付着量が少なくなる可能性が考えられた。 卵白タンパク質については、その主要成分であるオボアルブミンを主な試料として付着実験を行ない、付着量の温度依存性等に関するデータを蓄積した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホエイおよびその構成タンパク質については、熱凝集特性の解析とともに連続加熱実験と付着実験による付着特性の把握を計画に従って順調に進めることができ、知見を深めることができた。卵白についてもデータを蓄積しつつあり、おおむね順調に進展しているものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
多種共存するタンパク質の加熱時のステンレス鋼表面に対する付着挙動をより明確に把握できるよう、凝集体の形成進度および構造と付着量の影響についてさらに詳細な解析を進める。また、本年度の途中から着手した連続加熱実験における加熱管内壁に対する付着の速度論的数理モデルの構築についても引き続き注力し、構築されたモデルに基づいた解析を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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