研究課題/領域番号 |
23580161
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中村 宗一郎 信州大学, 農学部, 教授 (00105305)
|
研究分担者 |
藤井 博 信州大学, 農学部, 教授 (90165340)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | アミロイド性蛋白質 / 抗アミロイド効果 / カテコール誘導体 / 分子モデリング / 抗アミロイドーシス食品素材 |
研究概要 |
アルツハイマー病や透析アミロイドーシスなどアミロイド線維の沈着によって引き起こされる疾病が社会問題化している。種々のフェノール化合物にはアミロイド線維の形成と沈着を阻害・抑制する効果があることが示されているが,構造生化学的には不明な部分が多く残されているのが現状である。本研究は,カテコール基を有するフェノール化合物を骨格に,長さや性質の異なる脂肪アルコール鎖や糖鎖を付加し,アミロイド線維形成型蛋白質であるAβやシスタチン等の線維状化抑制効果を調べ,ヒトに安全な抗アミロイドーシス食品素材の創製へと繋げることを目的としている。まず,カフェ酸,ケルセチン及びクロロゲン酸にリパーゼ(Novozyme 435)を用いて長さの異なる脂肪アルコール鎖を付加したカテコール誘導体を作成した。Aβペプチドの線維形成阻害活性を調べたところ,より長い炭素鎖が付加されることで,高い活性が得られることが明らかにされた。次に,韃靼そば由来のルチナーゼを用いてルチノース糖鎖を導入したカテコール誘導体を作成し,抗アミロイド効果を調べたが,現時点では有意な改善効果を認めることができなかった。一方,これまでの研究で,Pichia pastoris発現系により,ヒト型シスタチン及びステフィンを大量発現させることに成功したので,今後は,これらの組換え蛋白質を用いて上述したカテコール誘導体の抗アミロイド効果を調べることが可能となった。また,ゴマセサミンを亜臨界水処理することによって,セサミンのモノ及びジカテコール誘導体を調製することに成功した。セサミンの抗アミロイド効果は,モノ及びジカテコール化によって飛躍的に上昇することが明らかにされた。また,杏中の天然化合物にも抗アミロイド効果を示すものがあることが確認できた。次年度以降,これらの知見を取り入れて,本研究を総合的に発展・深化させることが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,カテコール基を持つ種々のフェノール化合物に長さや性質の異なる脂肪アルコール鎖や糖鎖を付加し,Aβを用いた抗アミロイド効果を調べることができた。また,ヒト型シスタチン及びステフィンの大量調製にも成功し,今後はこれらの組換え蛋白質を用いた抗アミロイド効果を実施することが可能となった。電子顕微鏡を用いた構造生化学的解析及び老化促進モデルマウス(Senescence Accelerated Mouse, SAM)を用いた効果についても調べており,本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
上述したように,本研究は,おおむね順調に進展しているので,今後は,アミロイド線維形成型蛋白質ヒト型シスタチン及びステフィンを用いた実験,培養細胞や老化促進SAMマウスを用いた遺伝子レベル・生体レベルでの詳細な実験を展開し,また,天然食材中の抗アミロイド効果を示すフェノール化合物についても検討を加え,ヒトに安全な抗アミロイドーシス食品素材の創製への基盤形成の役割を担いたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は次のとおりである。1.抗アミロイド効果試験に用いる供試Aβを購入する。2.ヒト型シスタチン及びステフィンを用いた抗アミロイド効果試験を実施するため,組換え酵母の培養と目的蛋白質の分離精製が必要となる。その際,培地成分と精製用カラムを購入する。3.抗アミロイド効果の分子メカニズムを解明する目的で培養細胞実験を行うが,その際,細胞株の培養に関わる培地成分とプラスチック器具を購入する。また,バイオアッセイの為に必要な試薬類を購入する。4.老化促進SAMマウスを用いた実験を行うが,その際,実験動物を購入する必要がある。また飼料,βアミロイド関係の遺伝子と蛋白質の動態をモニターするために必要な試薬類を購入する。
|