研究課題/領域番号 |
23580161
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中村 宗一郎 信州大学, 農学部, 教授 (00105305)
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研究分担者 |
藤井 博 信州大学, 農学部, 教授 (90165340)
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キーワード | アミロイド性蛋白質 / 抗アミロイド効果 / カテコール誘導体 / 分子モデリング / 抗アミロイドーシス食品素材 |
研究概要 |
本研究は,種々のフェノール化合物にアミロイド線維の形成と沈着を阻害・抑制する効果があることが示されていることを手掛かりに,カテコール基を有するフェノール化合物をベースに炭素鎖や糖鎖を導入したり,亜臨界水処理による部分加水分解によってフェノール化合物にカテコール基を導入したりして,食品衛生学的に安全な抗アミロイドーシス性食品素材を創製しようとするものである。H24年度は,ヒト型シスタチンL68Q及びステフィンAの大量調製に成功し,またアミロイド線維形成型蛋白質ApoAIIを用いた抗アミロイド実験のアッセイ系確立にも成功した。そこでこれまでに調製した種々のアシル化カテコール誘導体の抗アミロイド効果をAβ,L68Q,ステフィンA,及びApoAIIの系を用いて詳細に調べた。その結果,標的とするアミロイド型蛋白質のタイプによってフェノール化合物に導入すべき炭素鎖長を最適化しなければならないことが明らかにされた。次に,平成23年度の研究結果では糖鎖の導入効果が見られなかったので,天然中に存在する朝鮮人参ジンセノサイド(配糖体)をモデルにした研究を実施した。すなわち,Ra1,Ra2,Ra3,Rb1,Rc,あるいはRdといった配糖体とプロトパナキサジオールあるはプロトパナキサトリオールといったアグリコンの抗アミロイド効果の比較を行った。その結果,付加している糖鎖の数と位置によって抗アミロイド効果は著しく異なることが明らかにされた。また,平成23年度に実施したセサミンの亜臨界水処理実験と同様に,セサミノールの亜臨界水処理によるモノカテコール体及びジカテコール体誘導体の調製も試みた。その結果,カテコール化によってセサミノールの抗アミロイド効果は,有意に上昇することが明らかにされた。このことは,老化促進モデルマウスSAMを用いた生体実験によっても確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度は,ヒト型シスタチンL68Q及びステフィンA&Bの大量調製に成功し,またアミロイド線維形成型蛋白質ApoAIIを用いた抗アミロイド実験のアッセイ系確立にも成功したので,様々な標的蛋白質を用いた実験を行うことができた。アミロイド前駆体蛋白質(APP)発現P19細胞(マウス胚性腫瘍細胞)細胞株を用いた実験は,現在,継続し実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで本研究はおおむね計画通り順調に進展している。平成25年度は,培養神経細胞を用いた実験と老化促進モデルSAMマウスを用いた実験を重点的に行う。また,新規物質の安全性の評価と食生活への利用形態についての検討も加え,ヒトに安全な抗アミロイドーシス食品素材の創製に資することができるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に引き続き,カテコール誘導体の構造と効果との関係についての構造機能相関解析を行い,更なる高機能化を試みる。その際には,培養神経細胞を用いたバイオアッセイや老化促進マウスSAMを用いた動物実験を重点的に行う。最終的には新規物質の安全性の評価と食生活への利用形態についての検討も加える。すなわち,有効性が確認されたカテコール誘導体については,サルモネラ菌を用いたエイムズテスト及び枯草菌を用いたレックアッセイを用いて変異原性を調べ,さらには,マウスを用いた毒性やアレルギー性についても調べる。また研究のとりまとめの際には,個々の機能特性を生かした食生活への利用形態についての検討も加える。
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