本研究は,Aβ,ApoAII,ヒト型シスタチン及びステフィンを標的アミロイドとして,より効果的かつ安全な抗アミロイドーシス食品素材を創製することを目的としている。すなわち本研究では,天然中に存在する種々のカテコール基を有するフェノール化合物の抗アミロイド効果を広く調べるとともに,酵素を利用して長さや性質の異なる脂肪アルコール鎖や糖鎖を付加し,それらの修飾が抗アミロイド効果に及ぼす影響を調べた。大豆イソフラボン類及び朝鮮人参シンセノサイド類についての実験結果から,付加している糖鎖の数と位置によって,また標的アミロイドの種類によって,抗アミロイド効果は著しく異なることが明らかにされた。一方,クロロゲン酸類及びその代謝物を用いた実験によって, IC50とLogP(疎水性度)との間には正の相関関係があることが認められ,疎水性度の高いフェノール化合物の方がより強い抗アミロイド効果を示すことが明らかにされた。そこで,桂皮酸類への糖鎖及び脂肪アルコール鎖導入効果を調べた。その結果,標的アミロイドに共通して,糖鎖の導入効果は認められなかったが,脂肪アルコール鎖については,特徴的な導入効果が認められた。すなわち,Aβに対しては鎖長が長いほどより強い効果を示すが,ヒト型ステフィンに対しては至適鎖長があることが明らかにされた。脂肪アルコール鎖導入効果は,培養細胞を用いたバイオアッセイ及び老化促進マウスSAMP8を用いた動物実験においても追認された。抗アミロイド効果を示したフェノール化合物については食品衛生学的な検証も行った。その結果,エイムズテスト及びレックアッセイのいずれにおいても変異原性陰性であることが確認された。また,マウスを用いた毒性試験によって脂肪アルコール鎖の導入は供試フェノール化合物のLD50を低くし,糖鎖導入はLD50を上昇させることが明らかにされた。
|