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2012 年度 実施状況報告書

食物繊維に対する消化管細胞応答の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23580163
研究機関岐阜大学

研究代表者

矢部 富雄  岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (70356260)

キーワード食物繊維 / ペクチン / フィブロネクチン / Caco-2細胞 / ポリアミン
研究概要

昨年度までに,フィブロネクチンがペクチンを認識する腸管上皮細胞局在タンパク質であること,さらにフィブロネクチンは食物繊維の化学構造を識別して特異的に結合していることを明らかにした。そこで今年度は,フィブロネクチンを介して細胞内に伝えられる情報を解析するため,腸管上皮細胞様モデル細胞としてCaco-2細胞を用い,ペクチンに対するCaco-2細胞応答の解析を行った。
まず,Caco-2細胞にペクチンを与えた際の細胞内代謝産物の変化をメタボローム解析によって調べたところ,細胞内のポリアミン量が減少していることが示されたことから,ペクチンに誘導されるポリアミン代謝関連遺伝子の発現量の変化をリアルタイムRT-PCRを用いて解析した。ポリアミン合成に関与するODC遺伝子,ポリアミン合成を調節するOAZ遺伝子,ポリアミン分泌に関与するSSAT遺伝子,ポリアミン再合成に関与するPAO遺伝子にそれぞれ注目し,ペクチンを細胞に添加6時間後のトータルRNAを回収した後に解析した。その結果,ペクチンを添加すると,ODCとSSATの遺伝子発現量が増加し,PAO遺伝子の発現量が減少することから,ペクチンによってCaco-2細胞のポリアミン合成が誘導され,さらにポリアミンが細胞外に分泌されていることが示唆された。
そこで次に,ポリアミンがペクチンの添加により細胞外に放出されているかを確かめるため,トランスウェルを用いた細胞培養によって培養上清を回収した後,塩化ダンシルを用いてポリアミンをダンシル化して標識し,HPLCによって分析した。その結果,ペクチン添加によって細胞外にポリアミンの一種であるスペルミジンが分泌されていることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

フィブロネクチンのレセプターとして知られている細胞表面のインテグリンが,ペクチンによる細胞応答に関与しているかについて今年度内に明らかにすることは出来なかったものの,ペクチンによる細胞応答としてポリアミン代謝関連遺伝子の発現量が変化すること,その発現量の変化から細胞外にポリアミン放出量が増加していることが示唆されること,そして実際に細胞外にポリアミンの一種であるスペルミジンの分泌量が増加していることを明らかにしたことは,Caco-2細胞においてペクチンを添加することで応答する代謝経路を解明するという研究の目的を達成したことにあたる。これは,本年度の当初の目標を十分に達成する結果が得られたと考えている。

今後の研究の推進方策

これまでに,ペクチンとフィブロネクチンが構造特異的に相互作用することを示し,またCaco-2細胞を用いてペクチンによるポリアミン分泌が誘導されることを明らかにしてきた。そこで今後は,フィブロネクチンの細胞表面レセプターとして知られているインテグリンが,ペクチンに対する応答においても機能しているかについて,阻害剤を用いた実験等によって解明する。
また,これまでに明らかにされたペクチンによるポリアミン放出が,動物の腸管においてどのような生理作用に影響しているかを解明するため,ペクチンを摂取させたマウスの腸管の細胞群の変化を観察する。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額が1円であるので,特に該当なし。

  • 研究成果

    (4件)

すべて その他

すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 食物繊維を構造特異的に認識するヒト小腸由来タンパク質

    • 著者名/発表者名
      矢部富雄
    • 学会等名
      第66回日本栄養・食糧学会大会
    • 発表場所
      東北大学
    • 招待講演
  • [学会発表] 腸管上皮細胞のヘパラン硫酸糖鎖構造に対するプルーンペクチンの影響

    • 著者名/発表者名
      村田一馬,金丸義敬,矢部富雄
    • 学会等名
      第10回糖鎖科学中部拠点若手の力フォーラム
    • 発表場所
      静岡県立大学
  • [学会発表] 腸管上皮細胞に対するプルーンペクチンのポリアミン合成促進作用

    • 著者名/発表者名
      石川愛美,本田明里,伊藤千弘,金丸義敬,森雄一郎,山元宏貴,伊神孝生,矢部富雄
    • 学会等名
      日本応用糖質科学会平成24年度大会
    • 発表場所
      東京農工大学
  • [学会発表] 腸管上皮細胞におけるプルーンペクチンのポリアミン代謝への影響

    • 著者名/発表者名
      伊藤千弘,石川愛美,本田明里,金丸義敬,森雄一郎,山元宏貴,伊神孝生,矢部富雄
    • 学会等名
      日本食物繊維学会第17回学術集会
    • 発表場所
      中村学園大学

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公開日: 2014-07-24  

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