研究課題/領域番号 |
23580164
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村上 明 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10271412)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ゼルンボン / 分子シャペロン / 熱ショックタンパク質 / ストレス応答 / ファイトケミカル / 求電子性物質 / 線虫 / ケミカルストレス |
研究概要 |
ゼルンボン(東南アジア産ショウガ科植物ハナショウガ成分)をHepa1c1c7マウス肝臓がん細胞に投与すると代表的な誘導型シャペロンであるHSP40やHSP70を含む、様々なHSPsが誘導されることをReal-time RT-PCR、PCRアレイ、およびWestern blotで確認した。次いで、作用メカニズムの解明を試み、次の知見を得た。1)ゼルンボン修飾タンパク質はHSP90に認識される(抗HSP90抗体による免疫沈降およびゼルンボン処理によるHSP90モノマーの減少)、2)ゼルンボンはHSPの転写因子HSF1をリン酸化し活性化する(ELISA)、2)HSP70の誘導にはHSF1が必須である(RNAi)。さらに、Hepa1c1c7細胞や線虫(C.elegans)をゼルンボンで前処理しておくと熱ショックによる細胞・個体死が抑制され、熱耐性を賦与することも明らかにした。同時に、線虫においては、ゼルンボンに対してHSP16.41が特に顕著に感受性の高い分子シャペロンであることも見出した。これらの作用は、マイルドな熱処理によっても観察された。一方、3大栄養素、ビタミン、ミネラル、および種々のファイトケミカル(PC)についてHSP70誘導能をスクリーニングしたところ、栄養素についてはレチノールと亜鉛のみが活性を示した。またPCに関しては、クルクミン、ウルソール酸、α―フムレン、フェネチルイソチオシアネート、リコペンなどに顕著な誘導能が見られた。従って分子シャペロンの活性化はPCに特有な機能性であることが示唆され、また、特に分子疎水性が高い、あるいは求電子性である場合に誘導能が高いと推察された。以上から、ゼルンボンを含むPCはケミカルストレッサーとして作用し、その程度が適度な場合においては、分子シャペロンの活性化などの適応応答を活性化することが示唆された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特にトラブルや予想外の実験結果が出たということはなく計画通りに進んでいる。ただ、ゼルンボンのHSP70誘導メカニズム解析において、HSF1の核内移行を免疫染色によって証明しようとしたが、HSF1がmultipleにリン酸化されるためか、明確なデータを得ることができなかった。そこで、これをELISA法によるHSF1のリン酸化というデータで補完することとした。
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今後の研究の推進方策 |
ゼルンボン修飾タンパク質がどのように代謝・分解されていくかを解析する。熱変性タンパク質などは通常、生体の恒常性維持においては不要と判断されるため、ユビキチン・プロテアソーム系、あるいはオートファジーなどのタンパク質消化機構で分解を受ける。低分子修飾タンパク質については、これまで、過酸化脂質分解物の4-ヒドロキシ―2―ノネナールなどによる修飾タンパク質の分解機構についての知見があるので、それらを参考に解析を進める。さらに、実験動物における付加タンパク質の生成やゼルンボン自体の代謝についても検討を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も大半の研究費は、実験試薬や細胞培養のためのプラスチック器具などの消耗品に充当する予定である。また、本年11月に日本フードファクター学会(静岡県立大学)が開催され、これまでの研究成果を発表するために出張するため、その旅費も計上する。さらに、現在、論文準備中であるため、投稿費用や別刷り代金も計上する。
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