ファイトケミカルは種々の生理機能性を示すが、薬剤と異なりその詳細な作用機構は不明な部分が多々残されている。以前に我々は、zerumbone(東南アジア産ショウガ科植物ハナショウガ根茎の主成分)の標的分子の1つをKeap1(解毒酵素誘導の鍵分子)と同定したが、同時に無数のoff-targetタンパク質群も存在することが判明した。本研究ではこの非特異的なタンパク質への結合に着目し、その意義についての解析を進めた。その結果、zerumboneは細胞タンパク質を変性させるが、それが適度である場合は、結果としてHSPなど分子シャペロン、ubiquitin-proteasome (UPS) やautophagy (AP) などの異常タンパク質分解系を顕著に活性化することを見出した。また、興味深いことに、zerumboneは、タンパク毒性物質であるHNEによるタンパク付加や細胞死を抑制し、さらに同様な作用はcurcuminやresveratrolなどにも観察された。これまでに、sulforaphaneなどが抗酸化・解毒酵素を誘導することが報告されているが、この現象も本質的にはchemical stressに対する適応応答だと捉えられる。上記の研究結果は、ある種のファイトケミカルがproteo-stressを誘導することでタンパク質品質管理機構を増強する可能性を示唆する。タンパク質品質管理機構は、神経変性疾患を始めとする種々の疾病の予防にも寄与していることから、ファイトケミカルの機能性発現機構の一部がタンパク質品質管理機構を介している可能性が提示できた。
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