研究課題/領域番号 |
23580167
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
金沢 和樹 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90031228)
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キーワード | 8ーオキソグアノシン / 脂質ヒドロぺルオキシド / 塩基酸化 / 抗酸化剤 / OHラジカル |
研究概要 |
生活習慣病の直接の原因は、その発症組織の細胞の遺伝子の変異である。変異は主にグアノシンが8-オキソグアノシン(8-OHdG)に酸化されることによる。この酸化は、過酸化水素がフェントン反応でOHラジカルを産生することによると考えられている。しかし、OHラジカルの半減期は9ナノ秒であり、フェントン反応はDNAの近傍に高濃度の遷移金属を必要とする。一方、不飽和脂肪酸は核膜などのリン脂質の2位に存在し、酸化するとヒドロぺルオキシドとなる。そこで、リノール酸ヒドロぺルオキシド(LAHPO)による8-OHdGの生成を過酸化水素と比較した。塩基単独、仔牛胸腺DNA、塩基を包んだリポソームなどに過酸化水素とLAHPOを添加すると、遷移金属を添加しない場合は、いずれの被検体でもLAHPOが有意に8-OHdGを生成した。ここに10 μMの2価鉄を添加すると、生成率の差はなくなった。次に、ラット肝細胞ミトコンドリアあるいはHepG2細胞にLAHPOを添加したが、8-OHdGの有意な生成は認められなかった。そこで、HepG2細胞に過酸化脂質還元酵素のグルタチオンペルオキシダーゼの阻害剤のメルカプトコハク酸を添加してから過酸化水素あるいはLAHPOを添加した。LAHPOは過酸化水素よりも有意に8-OHdGを生成した。次に、LAHPOによる8-OHdG生成を抑える抗酸化剤を検索した。ビタミンCは効果がなく、N-アセチルシステインは有意な抗酸化効果を示し、ビタミンEがもっとも顕著な効果を示した。そこで、ビタミンCをパルミチン酸エステルとすることで脂溶性にして添加した。このパルミチン酸エステルな顕著な効果を示した。以上の結果から、DNA変異を誘発する塩基の生体内酸化因子は、細胞膜に生じた脂質ヒドロペルオキシドであり、それを抑えるのは、膜脂質に親和性を示す脂溶性の抗酸化剤であると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、遺伝子変異を誘発するグアノシンの酸化を促進する生体内因子を明らかにすることと、その酸化を抑える抗酸化成分を明らかにすることで、生活習慣病予防の一役を担うことである。グアノシンを酸化する生体内因子は、24年度の研究で明らかにすることができたと考えている。候補には過酸化水素と脂質ヒドロぺルオキシドの2つがあり、一般的には過酸化水素原因説が定説であった。その定説を24年度の研究で覆すことができたと自負している。もう一つの目的の抗酸化成分については、脂溶性の脂質ヒドロぺルオキシドが酸化因子であるので、それを抑えることができるのは脂溶性の抗酸化成分という仮説に基づいて研究を進めた。おおよそこの仮説は証明できたと考えるが、疑問点は残っている。脂溶性のカロテノイドやキサントフィル類は効くのか効かないのか、あるいはフラボノイドのような脂溶性ポリフェノールの効果も探る必要がある。これらの課題は最終年度に解決できると考えている。したがって、平成24年度までの達成度は、自己評価ではおおよそ満点と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成25年には、カロテノイド、キサントフィル、フラボン、フラボノール、カテキン、アントシアニンなどの、日常食品に含まれている抗酸化成分の、脂質ヒドロぺルオキシドによる8-OHdG生成に対する抑制効果を測定する。この実験は年度の前半に終了し、後半ではその結果を整理する。そして、本研究の報告時期に合わせて、論文を投稿するとともに、本研究の報告書をまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬類に約15万円、ガラス器具類に15万円、成果発表のための学会出席旅費に約10万円、論文作投稿費に約5万円、研究成果報告書作成のために5万円ほどを使用する予定である。
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