研究課題
がんや糖尿病の直接の原因はその発症組織の遺伝子の変異である。変異は主にDNA塩基のグアノシンが8-オキソグアノシン(8-OHdG)に酸化することによっておこる。しかし、この酸化の原因となる生体内酸化因子については不明な点が多い。生体内酸化因子が明らかになれば、変異を抑えて疾患を予防することも可能である。本研究は酸化因子を明らかにして、それを抑える抗酸化物質を食品から見出すことを目的とした。平成23、24年度の研究で、生体内酸化因子はこれまでに考えられていた過酸化水素ではなく、核膜など生体膜のリン脂質のヒドロペルオキシドであることを明らかにした。最終年度は脂質ヒドロペルオキシドによる8-OHdG生成を抑える抗酸化物質を検索した。抗酸化ビタミンのビタミンCは効果が弱く、ビタミンEは顕著に8-OHdG生成を抑え、N-アセチルシステインも有意な効果を示した。そこで、水溶性のビタミンCにパルミチン酸エステルを付加して脂溶性としたものと、脂溶性のビタミンEの脂溶性側鎖を除いたトロロックスを試験した。脂溶性のビタミンCは8-OHdG生成を顕著に抑え、トロロックスは効果を示さなかった。つまり、8-OHdGを生成する生体内酸化因子が水溶性の過酸化水素ではなく、脂溶性の脂質ヒドロペルオキシドであるために、脂溶性の抗酸化ビタミンが有効であった。次に、脂溶性の食品因子の効果を測定した。カロテノイド類の中ではアスタキサンチンがもっとも強い効果を示し、フラボノイド類ではB環がカテコール構造のケルセチンとルテオリンが顕著な効果を示した。これらは率は低いが体内吸収される食品成分である。以上の結果は、遺伝子変異を抑えることで生活習慣病を予防するには、ビタミンEやアスタキサンチンを含む食品、ケルセチンを多く含むタマネギ、ルテオリンを多く含むブロッコリーなどを日々適量摂ることであると考えた。
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Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition
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British Jornal of Nutrition
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