研究課題/領域番号 |
23580170
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
井内 良仁 山口大学, 農学部, 准教授 (60272069)
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キーワード | 抗酸化物質 / SOD1 KO細胞 |
研究概要 |
本研究課題は、SOD1欠損線マウス維芽細胞(SOD1 KO MEF)を用いた通常酸素あるいは低酸素培養により、有効な抗酸化活性あるいは酸素毒性をもたらす化学物質の鋭敏な検出系を確立する事で、従来ならば動物実験まで行って初めてその抗酸化活性や酸化ストレスによる毒性が示されたような物質を、培養系で容易に、短時間で検出する事を目指している。 前年度までに、高酸素濃度下でもSOD1 KO MEFを増殖させるビタミンcをはじめ、幾つかの物質で抗酸化効果を確認する事が出来た。しかし抗酸化効果が報告されている物質でも全く増殖効果が得られかったものも多数あった。このことは、抗酸化能が知られている既知の物質においても、実際の生理的条件では有効に働く物と有効な効果が得られない物とがある可能性を示している。本研究の目的はそのような物質の選別を可能とする事であり、新規の評価系として本評価系が充分に機能する可能性が示された。 本年度、正常細胞を用いて酸化ストレスを与え、それに対する抗酸化能を検討する従来の方法と、SOD1 KO細胞を用いる本評価法とを比べた結果、本評価法がより鋭敏に反応することを示した。また抗酸化物質が効果を示すときの細胞の酸化ストレスの状態について検討を行うための予備実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
飼育中のSOD1遺伝子欠損マウスがやや不妊傾向にあり、計画通りに胎仔が得られなかったことと、蛍光顕微鏡とイメージベースサイトメーターを用いた酸化ストレスの評価の予備実験での実験条件の検討に時間がかかったことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の計画として、まず既知の抗酸化物質をSOD1 KO細胞に添加した際に、酸化ストレス軽減が起こっているのかどうかについて、フローサイトメーターと蛍光顕微鏡を用いた解析を行う。同時、にアポトーシス関連の分子についてウェスタン解析で検討する。酸化ダメージについては、タンパク質の酸化の程度をカルボニルブロットやBIAMによる-SH基酸化の検出系を使い、脂質の過酸化についてはHNEをはじめとするアルデヒドの測定を行う。 また、SOD1 KOマウス細胞を用いて確立した新規抗酸化物質の評価系を、未知の物質について応用するため、研究協力関係にある他研究室から分与して貰った、抗酸化の可能性が考えられる様々な化合物についての検討評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の予算に関しては、他の研究費で購入した試薬やキット、器具類を有効利用できた結果、本研究費の使用を最大限に抑える事ができ、次年度使用額が生じた。 一方、研究開始段階では予想できなかった新たな実験の必要性が生じてきた。培養細胞の酸化ストレスの評価に関連してより詳細に行うための抗体などの購入費用に、前年度からの繰り越しの予算を含めた今年度の予算を充てる予定である。
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