研究課題/領域番号 |
23580171
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
吉井 英文 香川大学, 農学部, 教授 (60174885)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | dehydration / cyclodextrin / crystal / maltose / trehalose / crystal transformation / electrospining |
研究概要 |
近年、分子構造(粉末、結晶構造)を、ビルドアップ式で小さな構造体を組み立てることにより構築する手法開発が盛んに実施されている。糖質の貧溶媒を用いたシクロデキストリン、マルトース、グルタミン酸ナトリウム結晶のナノ結晶粒子の作製に関して、結晶変換速度を制御することにより多孔性空間を要する結晶糖質塊集合体を作製し、機能性物質を包括するためのナノサイズの結晶粒子作製、結晶構造の再変換形成手法に関して工学的研究を実施している。本年度は、エタノール溶媒中で糖質、アミノ酸の含水結晶の結晶水を脱水することにより、新規な多孔性で比表面積の大きな無水結晶(糖質、アミノ酸)を創出する手法について検討した。初めに、結晶変換速度、結晶の形に及ぼす温度の影響について検討した。脱水速度は、糖質、アミノ酸のガラス転移温度と大きき関係した。含水結晶から無水結晶へ結晶変換をするためには、含水結晶が非晶質へと変換し、その非晶質体から水の移動を伴いながら結晶変換により無水結晶が生じる。そのため、結晶がガラス転移温度より少し温度が高いラバー状態のときに結晶変換が生じることを明らかとした。グルタミン酸ナトリウムを含水結晶から多孔性微細無水結晶を得るためには、圧力反応器を用いて140℃で実施した場合比表面積の高い無水結晶が得られた。この結晶変換速度定数の活性化エネルギーは、等温実験で120kJ/mol、定速昇温法では205kJ/molが得られた。これは、定速昇温法では温度域の異なる結晶変換挙動を測定しているためにラバー域より下の温度での活性化エネルギーを含むためと考えられる。無水結晶グルタミン酸ナトリウムの比表面積は1.07m2/gが得られた。多孔性結晶の特質として、過飽和域で多孔性結晶が保持するためにゲルを形成できる。このゲル特性を粘弾性計を用いて測定した結果、グルコースの無水結晶が最もゲルが安定であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)含水結晶の糖質、アミノ酸をエタノールに入れ、加温・加圧条件で撹拌することにより多孔性無水結晶を作製できた。このときの条件として、結晶水の移動速度が重要でガラス転移温度より上のラバー域で多孔性微細結晶ができることを、結晶変換速度の測定より明らかにした。(2)1-メチルシクロプロペンをαーシクロデキストリンへ包接させた結晶紛体からの1-メチルシクロプロペンの徐放速度を測定した結果、コラップス現象が観察できた。この徐放挙動観察が可能な湿度ランピング法による揮発性物質徐放速度測定装置を作製し、その特質について明らかにした。(3)マルトース、トレハロース、グルコース、グルタミン酸ナトリウムの多孔性無水結晶に水を添加し、過飽和状態においてゲル状の物理的特質が得られることを明らかとした。このゲル状特質の粘弾性特性を測定し、粘弾性特性と溶解度が密接に関連していることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)1-メチルシクロプロペンをαーシクロデキストリンに包接させた結晶を、エレクトロスピニング法を用いてナノファイバー作製の最適条件を探索する。このファイバーからの1-メチルシクロプロペンの徐放速度を測定する。(2)1-メチルシクロプロペンの徐放速度を推定するための統計学的推算手法について検討する。特に、湿度履歴を考慮した徐放速度推算のためのモデル構築を実施する。(3)ラクトースの多孔性無水結晶を作製するために、非晶質ラクトースを噴霧乾燥法により作製し、それをエタノールを用いた脱水操作により多孔性微細結晶を得る手法について検討する。(4)シクロデキストリンとCoQ10の包接体に、第3成分の界面活性剤を添加することによりミセル構造をもったCoQ10溶解溶液を作製する。このミセル構造について、サイズ、表面張力測定等からミセル構造を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)噴霧乾燥法を用いて非晶質体を作製しその脱水操作を行うために、噴霧乾燥機のノズル構造等の機械的改造のための消耗品費を用いる。(2)1-メチルシクロプロペンの徐放挙動観察を記録するために、データーロガーを購入する。(3)ランピング法を用いた揮発成分徐放速度測定のための、ガスクロ関係の消耗品費を用いる。(4)国際食品機械工業展、食品工学会、農芸化学会での学会発表の旅費を用いる。
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