研究課題/領域番号 |
23580171
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
吉井 英文 香川大学, 農学部, 教授 (60174885)
|
キーワード | dehydration / ethanol / crystal / maltose / lactose / anhydrous crystal / hydrous crystal |
研究概要 |
含水結晶をもつ糖質、アミノ酸は、温度、湿度に対して応答した水の吸着平衡をもつために乾燥することは難しい。無水結晶糖は、通常真空乾燥や高温での乾燥である強力乾燥(hard dehydration processes)とよばれる方法によって作製される。この真空乾燥法等で作製された無水結晶糖は、含水結晶と同様の結晶構造である。一方、溶媒媒介結晶変換のような脱水法であるソフト乾燥な条件での乾燥法を用いると溶解速度や反応速度の増加させることのできる比表面積を著しく増加させた特異な結晶を作製することができる。いくつかの糖質について新しい多孔性無水結晶糖を作製するために、エタノールに含水結晶糖をいれて結晶変換を実施させた。エタノールを用いた溶媒媒介転移(エタノールに含水結晶糖の結晶水を脱水させる方法)により無水結晶糖をえる方法として、トレハロース、-マルトース、グルコース、ラクトースについて検討した。ラクトースの結晶変換には、高圧反応器を用いた。なぜなら、エタノールの蒸発を抑え早い結晶変換速度を達成するために高圧反応器を用いた。結晶変換後の糖質のDSCを測定することにより、変換挙動を検討した。また、結晶の電子顕微鏡をとることにより、結晶の形態変化を観察した。エタノールを用いた脱水により、非常に比表面積の増大した多孔性の結晶が得られた。本溶媒媒介転移は、2ステップでおこっていると考えられる。最初のステップは含水結晶から非晶質体の生成で、次のステップとして非晶質体から無水結晶の生成と考えられた。このステップについて、DSCを用いて確認した。作製した無水結晶糖の安定性についても、恒温恒湿の条件に設置し溶媒媒介転移法で作製した無水結晶糖が安定性が高いことを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)エタノールを溶媒とした溶媒媒介転移法による含水結晶糖から無水結晶糖へ変換する手法を確立した。結晶変換速度が、糖質のガラス転移温度に大きく依存すること、エタノール中の水分率が大きく結晶変換速度に依存することを明らかとした。エタノール中に微量の水があると、含水結晶糖に水が吸水され糖のガラス転移温度は下がると考えられるが脱水の推進力が低下するので、微量の水は必要と考えられるが、数%以上の水があると結晶変換は生じなかった。 2)1-メチルシクロプロペン包接シクロデキストリン粉体のコラップス現象を湿度一定で温度を変化させる方法で調べた結果、温度一定で湿度を変化を変化させて得られたコラップス湿度と同様の温度、湿度で粉末のコラップスを観察できた。 3)シクロデキストリンとコエンザイムQ10の包接化合物に、界面活性剤であるグリチルリチンを添加することによりナノミセルを作製できる機構について検討し、ミセル形成反応とグリチルリチンとα-シクロデキストリンの包接体の競争反応であることを明らかとした。この形成されたミセル構造をAFMで観察した。
|
今後の研究の推進方策 |
1-メチルシクロプロペンをα-シクロデキストリンに包接させた結晶の特質について明らかにするとともに、その粉末を用いたカーネッションへの影響について検討する。カーネッション等1-メチルシクロプロペンを徐放させてエチレンによる熟成を阻害するためのファイバー、もしくは包装紙作製のために、長期に徐放させるためにファイバー径を変化させたものを、エレクトロンスピニング法を用いて作製する。同時に、シクロデキストリンにエチレンを包接させた場合についても検討する。 糖質の結晶変換に関して、ラクトースの結晶変換速度について検討する。ラクトースは、EU等での研究例が多いので、ラクトースのゲル化に用いることのできる無水ラクトースを作製する。作製したラクトースの特質について、比表面積との関係を明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
(1)糖質の結晶変換速度を測定するためのDSCの整備を実施する。購入後、数年を経過しているので、物性としての結晶変換速度を正確に測定するためにも、DSCの点検を実施する。 (2)ランピング法を用いて、粉末からの揮発成分の分析するためのガスクロ関係の消耗品を購入する。 (3)食品工学会、農芸化学会、化学工学会の発表のための旅費を用いる。
|