研究課題
平成23年度は主に筋肉細胞を用いてミトコンドリア機能培養細胞評価系を構築し、ミトコンドリア機能亢進効果の検討を行った。主な検討項目として、筋肉細胞の脂肪酸燃焼機能の制御、およびグルコース取り込み機能の制御に関して研究を遂行した。マウス由来C2C12筋管細胞に4時間以上の発酵乳NKGケフィア処理を行うことで、ミトコンドリアにおける脂肪酸β酸化に関与している5’-AMP-activated protein kinase(AMPK)およびAcetyl-CoA Carboxylase(ACC)のリン酸化の増強が確認されたことより、ミトコンドリア機能の活性化が生じていると考えられた。さらに、脂肪細胞が分泌するホルモンの一種アディポネクチンは骨格筋に対して運動と同様の効果を示すことが知られている。このアディポネクチンの受容体であるAdipoR1の発現量が発酵乳NKGケフィア処理時間依存的に増加していた。また、ミトコンドリア生合成に関与しているPeroxisome proliferator-activated receptor-γ coactivator-1α (PGC-1α)のmRNA発現量は比較対照群において12時間以上の時点で減少していくのに対し、ケフィア処理群においてはmRNA発現量が維持されていることが確認された。以上のように、NKGケフィアが筋肉のエネルギー代謝向上効果を持つことが強く示唆された。一方で、細胞外のグルコースを筋肉細胞内に取り込むことは筋肉の重要な機能の一つである。そこでグルコースの細胞内取込み活性を増強する食品成分の探索を行ったところ、発酵乳NKGケフィアに加え、還元水においても増強活性が確認された。さらにこの細胞内グルコース取込み増強効果はインスリン刺激の有無にかかわらず増強することが確認された。
2: おおむね順調に進展している
研究開始時に立案した研究実施計画に基づき研究を遂行できている。平成23年度は研究初年度として研究遂行の柱となる機能性培養細胞を用いたミトコンドリア機能評価系構築を行うことが第一の目的であり、その構築したミトコンドリア機能評価系を用い、ミトコンドリア機能亢進効果を有する機能性食品の検討を行うことが第二の目的であった。平成23年度は順調にこの二つの目的を達成でき、次年度以降の研究につながる成果が挙げられた。
今後は構築されたin vitro培養細胞評価系により筋肉・肝細胞それぞれにおける脂肪酸燃焼機能制御、細胞へのグルコース・脂質取込み機能制御、エネルギー代謝機能制御などの抗メタボリックシンドローム効果を有する機能性食品成分の単離・同定、加えて活性成分の作用点を明確にするための検討を行う。また、タンパク質品質管理機能増強、DNA修復機能増強が抗メタボリックシンドロームに寄与する効果の検討を行う。さらに、メタボリックシンドロームのモデル動物を使用した動物実験により包括的な抗メタボリックシンドローム機能を有する機能性食品の評価を行う。一方で、レプチン機能異常によりメタボリックシンドロームとなるモデル動物を用い、本研究で得られた抗メタボリックシンドローム効果のin vivoでの評価を行っていく。
当初の予定通り、新規の機器購入の予定はない。前年度より継続する研究に使用する物品費と情報収集・成果発表用の旅費が研究費の主な使用用途となる。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (11件)
Cytotechnology
巻: 64 ページ: 281-297
10.1007/s10616-011-9414-1
Trends in Food Science and Technology
巻: 23 ページ: 124-131
10.1016/j.tifs.2011.10.009
巻: 63 ページ: 119-131
10.1007/s10616-010-9317-6
PLoS One
巻: 6
10.1371/journal.pone.0027441
Bioscience, Biotechnology and Biochemistry
巻: 75 ページ: 1016-1018
10.1271/bbb.110069
巻: 75 ページ: 1295-1299
10.1271/bbb.110072