研究課題/領域番号 |
23580173
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
永尾 晃治 佐賀大学, 農学部, 准教授 (10336109)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 肥満誘発性病態 / 脂肪組織 / 疾患遺伝子 / 食環境 |
研究概要 |
肥満誘発性病態発症の危険因子及び抑制因子に関して、In vitroおよびin vivo実験系を用いて検索・検討を行った。農作物の凍結乾燥粉末および抽出物を用いた実験により、脂肪組織から分泌されるアディポサイトカインのうち、アディポネクチン発現低下がインスリン抵抗性の惹起や非アルコール性脂肪性肝臓障害発症と深く関わっていることが明らかとなった。とくにレンコンの乾燥粉末には、善玉因子であるアディポネクチンを上昇させる作用があり、その抽出物には様々な重合度のB型プロシアニジンとプロデルフィニジンのホモおよびヘテロポリマーが検出された。品種、品質および部位の異なるレンコンのポリフェノール量と抗酸化活性について調べたところ、レンコンの総ポリフェノール量は、品種による差はなかったが、未利用部位のポリフェノール量と抗酸化活性は、高品質部位よりも高かった。さらに、レンコンのポリフェノール量は、野菜の中でも比較的高いことが認められた。さらにレンコンのプロアントシアニジンは、脂肪酸合成酵素活性低下による脂肪肝改善効果を有し、今後、未利用レンコンを機能性食品として有効利用できる可能性が示唆された。 よって本研究により、善玉因子であるアディポネクチン発現を亢進する様なアディポサイトカインプロファイルの改善を制御できる食品成分が存在し、食環境によるメタボリックシンドローム発症の予防・改善への活用が期待できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度の成果として、幾つかの新知見と、雑誌論文7件、学会発表8件の成果が得られたから。
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今後の研究の推進方策 |
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の増加に伴い脂肪細胞より分泌されるアディポサイトカインのプロファイル変化が他の組織に悪影響を与えて様々な症状を発症させている状態である。逆に、アディポサイトカインプロファイルを改善することで内臓脂肪からの悪影響を緩和し、他の組織で発症する症状を抑制することも可能である。23年度の研究により、肥満発症によってもたらされた炎症性アディポサイトカインの増加や抗炎症性アディポサイトカインの減少が、肝臓に於けるインスリン感受性や脂質代謝制御に関わる酵素活性を変動させ、非アルコール性の脂肪性肝臓障害を誘発することが明らかとなった。24年度はメタボリックシンドロームにおいて密接な相互関係を持つ内臓脂肪と肝臓をモデルとして、臓器間クロストークの詳細をコラーゲンゲル共培養系を用いたトランスクリプトーム解析により解明する。さらには、臓器間クロストークを誘導するアディポサイトカインおよび臓器間クロストークに応答する遺伝子群をインデューサー及びバイオマーカーとすることで、新規スクリーニング系の構築を行い、食品由来機能性成分の効率的な探索を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究費は、in vitro実験系に使用する各種細胞、in vivo実験系に使用する各種病態モデル動物および実験試薬を購入する消耗品費として使用する。研究に必要な設備備品は既に本学に揃っているため、購入の必要はない。
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