研究課題/領域番号 |
23580173
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
永尾 晃治 佐賀大学, 農学部, 准教授 (10336109)
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キーワード | 肥満誘発性病態 / 脂肪組織 / 疾患遺伝子 / 食環境 |
研究概要 |
昨年までの研究により、肥満誘発性病態発症の危険因子に関しては、慢性炎症を引き起こす炎症性アディポサイトカインの産生制御が重要であることが示唆されており、In vitroおよびin vivo実験系を用いて有効な食事成分の検索・検討を行った。キノコの凍結 乾燥粉末および抽出物を用いた実験により、脂肪組織から分泌される炎症性アディポサイトカインのうち、Monocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)の発言上昇がインスリン抵抗性の惹起や非アルコール性脂肪性肝臓障害発症と深く関わっていることが明らかとなった。そこでMCP-1の発現を制御している転写因子Nuclear factor kappa B(NFkB)に対するキノコ由来成分の影響をin vitro実験系により検討したところ、熱水抽出物および固相カラム20%EtOH抽出画分に顕著な活性抑制作用を見いだした。今後、HPLC-TOF MSを用いたディファレンシャル解析により、対象キノコ特有の機能性活性成分の道程を目指す予定である。また肥満誘発性病態発症の抑制因子に関しては、海藻由来複合脂質中に善玉アディポサイトカインであるアディポネクチン上昇作用が見いだされた。複合脂質中にはリン脂質および糖脂質が含まれるため、in vitroおよびin vivo実験系により分画サンプルの生理活性評価を行うことで、脂質構造と生体内輸送・生理活性発揮との関係性についてのより詳細な解析を行う予定である。 本研究により、食事成分により慢性炎症を引き起こす悪玉因子アディポサイトカインの産生抑制が可能であることが示され、また善玉因子であるアディポネクチン発現を亢進することも可能であることが示された。よって食環境によるメタボリックシンドローム発症の予防・改善という試みが、今後十分期待できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の成果として、幾つかの新知見と、雑誌論文5件、学会発表24件、図書1件、特許出願2件の成果が得られたから。
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今後の研究の推進方策 |
近年、メタボリックシンドロームにおける臓器障害には脂肪組織由来の炎症性アディポサイトカインによる慢性炎症惹起の関与が指摘されている。また逆に、抗炎症性アディポサイトカインの産生を更新させることで慢性炎症の 悪影響を緩和し、他の組織で発症する症状を抑制することも可能である。24年度の研究により、食事成分による炎症性 アディポサイトカインの産生抑制や抗炎症性アディポサイトカインの産生増強が、肝臓に於けるインスリン感受性や脂質代謝制御に関わる酵素 活性を変動させ、非アルコール性の脂肪性肝臓障害を改善することが明らかとなった。25年度は食事成分中の生理活性成分の構造決定を進めるとともに、メタボリックシンドロームにおいて密接な相互関係を持つ内臓脂肪と肝臓の臓器間クロストークを誘導するアディポサイトカインおよび臓器間クロストークに応答する遺伝子群をインデューサー及びバイオマーカーとすることで、新規スクリーニング系の構築を行い、食品由来機能性成分の効率的な探索を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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