研究課題
マウス由来前駆脂肪細胞株3T3-L1細胞をコンフルエントの状態にし、分化培地にて2日間培養後、成熟培地にて1日おきに培地交換を行い、脂肪細胞に分化・成熟させた。成熟過程でリポ酸で処理し、8日目に細胞内トリグリセリド蓄積量をOil Red O染色により測定した。また、アンジオポエチン様因子2のタンパク質発現レベルをWestern Blotにより測定した。さらにマウス由来のマクロファージ細胞株であるRAW264.7細胞をLPS処理して得られた培養上清を3T3-L1細胞に添加することで擬似炎症状態を誘導し、擬似炎症状態におけるアンジオポエチン様因子2の発現に対するリポ酸の影響について検討した。その結果、細胞毒性のない濃度において、リポ酸は脂肪細胞内のトリグリセリド蓄積量に影響を与えなかった。一方、3T3-L1細胞内に蓄積した油滴はリポ酸処理によって小型化する傾向が認められた。細胞中のアンジオポエチン様タンパク質2のタンパク質レベルでの発現はリポ酸処理により有意に減少した。3T3-L1細胞のアンジオポエチン様因子2発現量は細胞を擬似炎症状態にすることで上昇したが、リポ酸処理により減少した。これらのことから、リポ酸によって脂肪細胞のアンジオポエチン様因子2の産生を減少させて脂肪組織における慢性炎症を抑制できる可能性が示唆された。また、アンジオポエチン様因子2の受容体であるインテグリンβ1の発現に対するリポ酸の影響をヒト膀胱がん細胞を用いて調べた結果、リポ酸が細胞表面におけるインテグリンβ1の発現量を低下せることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
アンジオポエチン様因子2自体およびアンジオポエチン様因子2の受容体であるインテグリンβ1の発現がリポ酸によって抑制されることを明らかにすることができた。
初年度に確認したリポ酸によるアンジオポエチン様因子2の遺伝子発現レベルにおける発現抑制を再確認する。リポ酸による培養脂肪細胞におけるアンジオポエチン様因子2発現抑制のメカニズムを明らかにする。ヒト膀胱ガン細胞の増殖、遊走、転移、炎症関連転写因子活性等に対するアンジオポエチン様因子2の影響について検討し、促進作用が認められた場合には、インテグリンβ1の関与とリポ酸による抑制の可能性について検討する。
試薬、血清、培養器具、抗体、ELISAキット等の消耗品に約80%、成果発表のための旅費に約20%使用する予定である。
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