研究課題/領域番号 |
23580175
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
北原 兼文 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (30240922)
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キーワード | サツマイモデンプン / 緩慢糊化性デンプン / レジスタントスターチ / サツマイモペクチン |
研究概要 |
サツマイモ緩慢糊化性デンプンの特性は1系統しか調べていなかったので、新たに4系統の緩慢糊化性デンプンを加えて特性を調べた。いずれの緩慢糊化性デンプンも、高アミロース性などの共通する構造特性を有することを確認するとともに、新たな高アミロースデンプン2系統(44%と52%)を見出し、これらがレジスタントスターチ(RS)機能に優れることを明らかにした。また、一般デンプンのRS含量は、生デンプン粒で高く、糊化により大きく減少するが、緩慢糊化性デンプンでは、生デンプン粒で低く、糊化により倍増するという特殊性を見出した。緩慢糊化性デンプンの高機能化を図るため、緩慢糊化性の程度の異なる2系統のデンプンを用い、デンプン粒の最外部鎖についてイソアミラーゼによるトリミング処理を検討した。軽度の緩慢糊化性デンプンはトリミング処理によりRS含量が増加することを認めたが、RS含量の高い強度の緩慢糊化性デンプンは酵素によるトリミング分解性が悪く、処理効果が出にくいことが分かった。 次にサツマイモペクチンについては、一般品種のデンプン抽出残渣からペクチンを調製し、その特徴を調べた。サツマイモペクチンは、常圧において熱水抽出ではほとんど抽出できず、微アルカリ性のリン酸水素二ナトリウム水溶液により効率良く抽出できた。一方、80 MPaで50℃の高圧条件下では、水抽出の効率が高まり約65%の収率でペクチン画分を得ることに成功した。得られたペクチン画分の性質を調べた結果、常圧リン酸塩抽出では低メトキシルペクチンが、高圧水抽出では高メトキシルペクチンが調製されることを明らかにした。これらはカルシウムイオンによるゲル化能が異なり、低メトキシルペクチンのみゲル化した。また、サツマイモペクチンは、市販のレモンやリンゴペクチンと比較すると、中性糖含量が高く、その組成ではアラビノースの割合が高いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、サツマイモ緩慢糊化性デンプンの高機能化法の検討と、サツマイモペクチンの抽出法の検討を行う計画であった。緩慢糊化性デンプンの高機能化法では、イソアミラーゼによるトリミング処理でレジスタントスターチ(RS)含量の増強を試み、RS含量が増加することは認めたものの、強度の緩慢糊化性デンプンでは粒構造の特殊性により処理効果が弱く、更なる検討が必要であった。一方、新たに調査した系統の中に、さらにRS含量が高い高アミロースデンプンを見出したことは興味深く、高機能性デンプン素材として今後の研究に有益となった。また、サツマイモペクチンについては、一般サツマイモを用いて、常圧リン酸塩抽出法と高圧水抽出法によりメトキシル化度の異なるペクチンが調製できることを実証し、サツマイモペクチンの特徴を明らかにできた。これらの知見を活用して、今後に緩慢糊化性デンプンを有するサツマイモのペクチンについて調べる予定である。 以上のことから、概ね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、引き続き緩慢糊化性デンプンの高機能化法を検討するとともに、緩慢糊化性デンプン系統のサツマイモペクチンの構造特性と利用特性を明らかにする。緩慢糊化性デンプンの高機能化では、酵素を用いる方法を再検討し、加えてデンプン粒の温水処理や酸処理などの物理的処理によるレジスタントスターチ機能の強化を検討する。一方、サツマイモペクチンについては、今年度に確立した抽出方法により緩慢糊化性デンプン系統からもペクチンを調製し、メトキシル化度や糖組成、分子量などの構造特性と利用特性を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、最終年度にあたるので備品の購入予定はなく、実験用の消耗品費および研究成果の公表のために旅費や論文発表費に使用する。
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