研究課題/領域番号 |
23580176
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
侯 徳興 鹿児島大学, 農学部, 教授 (90305160)
|
研究分担者 |
橋本 文雄 鹿児島大学, 農学部, 教授 (70244142)
|
キーワード | アントシアニン / MAPキナーゼ / 結合解析 / 細胞標的分子 |
研究概要 |
アントシアニンはブルーベリー、シソ、ナスや黒米など多くの食材に含まれる赤や紫色を呈するポリフェノールであり、抗酸化能や癌予防機能を有し、食品因子として大きく注目されている。本研究は、その作用標的分子MAPキナーゼの同定と結合機構の解明を目的としたものである。初年度は、水晶発振子マイクロバランス装置を用いてアントシアニンとMAPキナーゼとの親和力を解析した。その結果、デルフィニジとMAPキナーゼの親和力は、デルフィニジン > シアニジン、また、アグリコン > グリコサイドの順であり、さらに、MAPキナーゼ中の親和力は、MEK1 > ERK > B-RAFの順であった。2年度目はMAPキナーゼと強い親和力を示すデルフィニジンおよびそのグリコサイドを選定し、プルダウン法によりアントシアニンとMAPキナーゼとの直接結合能力を解析した。インビトロでアントシアニンをビーズにカップリングさせ、精製MAPキナーゼまたは培養細胞タンパク質との直接的な結合実験を行い、モノナル抗体により結合したMAPキナーゼを検出した。その結果、デルフィニジンがMAPキナーゼとの直接結合を示し、その結合の強さは、MEK1 > ERK > B-RAFの順であった。 デルフィニジンまたはそのグリコサイドとMAPキナーゼとの結合力の強さは、これまでに明らかにされた親和力の強さ、アントシアニンの細胞癌化抑制効果の強さと同じ傾向を示している。従って、MAPキナーゼがアントシアニンの作用標的分子となる可能性が強く示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験材料の準備および解析手法の習得が周到であった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23および平成24年度に得られた強い親和力および直接結合力を示していたアントシアニンを用いて、さらに低分子とタンパク質の結合解析手法を用いて、これらのアントシアニンと MAPキナーゼの具体体な結合部位を解析し、結合分子モデルを構築する。まず、アントシアニンおよびその体内代謝産物の化学構造の情報を収集する。一方、アントシアニンと結合するMAPキナーゼの結晶構造を(PDB)タンパク質構造データベースから取り寄せる。低分子とタンパク質結合モデリングの解析ソフトを用いて、アントシアニンおよびその体内代謝産物をMAPキナーゼの結晶構造にドッキングさせ、結合部位を明らかにし、その分子モデルを構築する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
① アントシアニンとMAPキナーゼとの結合部位を解析する実験費用: 計850,000円(内訳、アントシアニン精製:100,000円; MAPキナーゼタンパク質及びそれらの抗体:400,000円; 細胞培養器具と血清等: 350,000円)。 ② 国際学会参加・発表の旅費: 250,000円 ③ 研究補助謝金: 100,000円
|