研究課題/領域番号 |
23580177
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Protein Delivery / Ovotransferrin / Pathogens / Anti-infective Drug / Drug Delivery / Antimicrobial / Iron-binding / Transferrin Receptor |
研究概要 |
世界中で高い死亡率の一つである伝染病の治療のために、これまで数多くの抗菌剤の発見または開発がなされてきた。しかし、近年既存の抗生物質に対して抵抗性を示す「薬剤耐性菌」が増加し、それらの病原菌によって引き起こされる感染症が大きな問題となっている。そのため、耐性菌を生じさせないための独特の活性を持った新規抗菌剤を開発することが早急に求められている。フェノール化合物は強い抗菌作用を有していることから抗菌剤として非常に魅力的な物質であり、抗菌、抗ウイルスなどの生物学的活性が知られており、魅力的な天然の防腐剤として多くの研究がなされている。しかし、フェノール系の抗生物質は、細菌膜による細胞内への侵入阻害や水に難溶性であること、安定性が低いこと、そして高濃度にすると強い副作用を示すことなどから薬剤として用いることへの制限が多くある。そのため、それらの薬剤の難水溶性を改善する戦略と特異的なデリバリーシステムの開発が求められている。オボトランスフェリン(OTf)は、卵白に含まれる金属結合タンパク質であり、2つの互いに似たドメイン(NローブとCローブ)からなり、それぞれに鉄イオン結合部位が1個ずつある。鉄結合によって細菌の代謝に必要な鉄を奪うことで抗菌活性を示す。以前の研究によってNローブには抗菌性ペプチド(Nクリングルドメイン)が存在していることを明らかにした。また、Nクリングルドメインは細菌膜において、孔隙またはイオンチャンネルをつくることが分かった。OTfのクリングルドメインは、ドラッグデリバリーの役割を担うと考えられた。 本研究では、様々なフェノール系の抗生物質とオボトランスフェリン及びその組換えドメインや Nクリングルドメインの複合体を調整し、抗生物質の水溶性の改善、新たなドラッグデリバリーシステムの開発を目的とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
各細胞の表面にはトランスフェリン受容体があり、特に病原菌及び癌細胞に多量の鉄を要するので重要である。鉄を結合したトランスフェリンがこの受容体に結合すると、インドサイトーシスにより被覆小胞に包まれて細胞内に輸送される。受容体はトランスフェリンを結合したまま細胞表面に再輸送(エクソサイトーシス)され、次の取り込みに備える。本研究ではオボトランスフェリン及びそのドメインをキャリアーとして、サルファ系抗生物質とのコンプレックスを形成し、病原菌及び感染した細胞の表面には、トランスフェリン受容体が正常細胞より多く出現しているので、オボトランスフェリンのドメインを薬剤のリガンドとして用いると、病原菌又は感染された細胞まで運搬することが可能となり、新規薬物送達戦略の開発へつながるものと期待できる。 現在まで実験は、主にオボトランスフェリン (OTf)及び分離したドメイン (Nローブ及びCローブ)と様々な不溶性な抗生物質の相互作用を調べた。実験結果から、OTfとサルファ系抗生物質の一つである「スルファメトキサゾール(SMZ)」が相互作用してSMZ-OTfコンプレックスが形成され、SMZの難水溶性が改善されたことが確認できた。また、SMZ-OTfコンプレックスは、OTfやSMZを単独で用いるよりも、様々な病原菌に対して強い抗菌活性を示した。さらに、細菌およびヒトの細胞膜に存在するトランスフェリンレセプターとOTfの相互作用も確認でき、抗感染実験の結果から、感染された細胞に対してもSMZ-OTfコンプレックスは有効的であることが分かった。さらに、OTfとそのNローブ及びCローブの様々な病原体への抗生物質を配達する能力を調べた。 そして、OTfとそのドメインの遺伝子クローニングを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の実験は、以下のように実施する: OTfと人トランスフェリン(hLf)からN-ローブ(KGL-N 109-216)とC-ローブ(KGL-C 449-550)のクリングルドメインをクローニングし、site-directed mutagenesis法によりシステイン残基(Gly-136-Cys)を変異導入される。そして、ピキア発現ベクター(pPICZαB)にDNAをサブクローニングし、すべてのpPICZαBをピキア酵母(GS115)にトランスフェ クションを行う。ゲノムPCRによるピキアゲノムへのDNA統合を解析した後、ピキア細胞外のlarge-scale発現の条件を確認する。 OTfの組換ドメインの薬物複合体の病原体に対する抗菌作用を調べる。マクロファージ細胞内寄生性細菌(リステリア、サルモネラ、レジオネラなど) に対するOTfの組換ドメインの薬物複合体の薬物送達機構を調べる。そして、OTfの組換ドメインの薬物複合体との病原体膜及びヒト細胞表面トランスフェリン受容体の相互作用について免疫学的手法を用いて解析する。様々な病原体に対するOTfと組換ドメインの薬物複合体の薬物送達メカニズムについて分子遺伝学的・生化学的手法を用いて解析する。さらに、新規ペプチドベースの抗がん治療に向けて、OTfや組換ドメインの抗癌剤複合体を用いて分子レベルでの抗癌機能を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度に、細胞内感染への有効性の測定を行い、その結果を基にヒト結腸癌細胞(HCT-116)を病原菌で感染させ、OTf―抗生物質のコンプレックスの抗感染作用を測定したが、HCT-116細胞が感染しにくいという結果が出たため、計画を変更しヒトマクロファージ細胞内感染への有効性の解析を行うこととした。このため、ヒトマクロファージ細胞の注文を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとした。
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