研究課題
世界中で高い死亡率の一つである伝染病の治療のために、これまで数多くの抗菌剤の発見または開発がなされてきた。しかし、近年既存の抗生物質に対して抵抗性を示す「薬剤耐性菌」が増加し、それらの病原菌によって引き起こされる感染症が大きな問題となっている。そのため、耐性菌を生じさせないための独特の活性を持った新規抗菌剤を開発することが早急に求められている。スルファ系の抗生物質は強い抗菌作用を有していることから抗菌剤として非常に魅力的な物質であり、魅力的な天然の防腐剤として多くの研究がなされている。しかし、スルファ系の抗生物質は、細菌膜による細胞内への侵入阻害や水に難溶性であること、そして高濃度にすると強い副作用を示すことなどから薬剤として用いることへの制限が多くある。そこで、このような薬剤の難水溶性を改善する新たな戦略と、特異的なデリバリーシステムの開発が求められている。卵白オボトランスフェリン(OTf)は、鉄結合によって細菌の代謝に必要な鉄を奪うことで抗菌活性を示す。以前の研究によってNローブには抗菌性ペプチド(Nクリングルドメイン)が存在していることを明らかにした。このドメインは細菌膜において、孔隙またはイオンチャンネルをつくることが分かった。OTfのNクリングルドメインは、ドラッグデリバリーの役割を担うと考えられた。さらに、OTfは、細菌やヒト細胞の表面に存在するトランスフェリンレセプターに対して、選択的に結合することが明らかになった。したがって、OTfは、サルファ系抗生物質を細菌または感染された細胞へと運ぶ「キャリア―」として、新しいドラッグデリバリーシステムの開発に期待ができる。本研究では、様々なスルファ系の抗生物質とOTf及びその組換えNクリングルドメインの複合体を調整し、抗生物質の水溶性の改善とともに新たなドラッグデリバリーシステムの開発を目的とした。
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International Journal of Molecular Science
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Journal of Agricultural and Food Chemistry
巻: 61 (26) ページ: 6358-6365
10.1021/jf401152e