研究概要 |
フラボノイドは抗酸化活性など種々の保健効果が期待されているが、生体利用性の低さが難点である。我々は、フラボノイドの吸収を検討する中で、ペクチンがケルセチンの吸収を増大させることを見出した。そこでペクチンの作用を明らかにするために、ペクチンによってケルセチンの生理機能が向上するか否か、また作用を受けるフラボノイドの構造相関性などペクチンの吸収促進作用の解明を研究の目的とした。 最終年度にはカテコール基をB環に有する各種フラボノイド (フラボン, フラバノン, フラボノール, フラバノールおよびフラバンオール) の吸収に及ぼすペクチンの影響を検討し、C環カルボニル基が吸収増加に必須であることを明らかにした。また、ケルセチンの各種配糖体 (グルコシド, ガラクトシド, ルチノシドおよびラムノシド) の吸収は、ペクチンの作用を受けないことも明らかになった。 本研究によって、フラボノイドの構造活性相関からペクチンの吸収増大作用はフラボノイドB環の水酸基数が多いほど顕著であり、C環にカルボニル基を有することが必須で、さらにC環の二重結合と水酸基の存在が作用を強めることが示唆された。また、フラボノイドの種類により強弱はあるもののペクチンによってフラボノイドの吸収が増加すると低密度リポタンパク質 (LDL) の酸化抵抗性も強まることも明らかになった。特に、ケルセチンはペクチンの摂取量依存的に吸収性が増大し、それによってLDLの酸化抵抗性が増強することを明らかにした。 これらの結果は、難消化性糖質の新しい作用を示す可能性があると共に、吸収の低いフラボノイドの吸収性向上にアプローチするものである。さらに、フラボノイドと難消化性糖質を共に豊富に含む野菜や果物などを摂取した際の生理作用を高める点から、人の健康増進にも寄与し得ると考える。
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